どのようにして貨幣は共同体の抑制を超えてしまったか

「問題は、こうした貨幣フェティシズムに対する伝統的な抑制がどのような経緯で外れたかです。遠距離で商品を交易する国際的な商業の発展がそのきっかけです。国際商業は共同体の外、共同体間の商業ですから、共同体による抑制など働かないわけです。純然たる儲け本位の取引になる。その結果、貨幣が政治的制度として出現したことが忘れられて、貨幣は金銀銅などの単なる金属商品になる金属であり、それ自体で商品として価値があるとされるようになる」

「こうして世界貿易が発展する時代に金本位制も確立します。それに伴い、貨幣は商品交換のための便宜的手段に過ぎないと言う見解が主流になってくる。この皮相な見解が近代経済学の土台になっています。しかし、その起源をさかのぼってみれば、貨幣は社会の富を生産し、分配するための政治的手段だったのです」

「銀行は貨幣を金が金を生むトリックに使える商品として扱い、買いだめや売り惜しみをする悪徳商人と同じことをやります。社会を恒常的な金欠状態にしておくことが銀行商売の秘訣です。だがこれは最終的には経済の血液である通貨の円滑な循環を停止させてしまうのです」

貨幣の歴史を知ることでいまの貨幣制度、そして世界の問題の核心に迫っていく関さん、すごいな。

関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』


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