【書評】進化する里山資本主義 著者 藻谷浩介
こんにちは。あんパパです。
今回は「書評」です。
読んだ本はこちらです。
最近は資格受験生時代から診断士の知識を得られるように界隈の方々が紹介されている本を重点的に読んできましたが、試験に合格して一段落した今、以前から興味のあった「地方創生」や「田舎暮らし」といったテーマに即した本を読みたいと思いこの本を選びました。
結論から言うと、「中小企業診断士とは無関係に読み出した本が非常に中小企業と親和性があった」、と言う事です。
では詳細は、次項以降で書いて行きたいと思います。
里山資本主義とは
「里山主本主義」というワードを聞いたのはもう10年前くらい前の事。
何かのラジオの対談だったかと思います。
コロナ禍が始まる前よりアウトドア好きだった私は休みの度にキャンプに行ってました。
キャンプ場は山の中や田舎にありますのでもともと田舎暮らしや農業などに興味があった事もアウトドア好きになった影響かもしれません。
キャンプ場のある田舎や山奥の集落に行っては近郊の「道の駅」や野菜や名産品の「即売所」で野菜など地元の食材や加工品を買って帰るのが好きでした。そんな時にラジオで「里山資本主義」というワードを聞いてこの言葉に興味を持ち始めました。
「里山資本主義」は「資本主義」と言う言葉にある通り基本は資本主義です。社会主義や共産主義的な考え方ではありません。
今、我々が日本で生活している資本主義的な考え方の延長線上にあります。
私の理解ではマイルドな資本主義です。
この本では「里山資本主義」の比較対象として「マネー資本主義」を挙げて
います。「マネー資本主義」はその名の通りお金を至上とする考え方です。
常に効率や成長の中にあって競争をその原資として金銭的な満足度を最大化する考え方、と自分の中では定義しています。
「里山資本主義」でも当然、お金は必要です。
お金である程度のものは買えますからお金が多いに越した事はありません。
ただ、日頃の生活の中で、例えば食材の一部を自分の畑で育てたり物々交換で手に入れたいりしながらお金ではない要素で日常を回していくような考え方だと理解してます。
そして、その考え方を回していくには当然相手が必要になってきます。物々交換してくれる相手、使わなくなったものを譲ってくれる相手、必要なものを共有してくれる相手などです。
お金だけでない、もしくはお金の貨幣価値だけに頼らない経済圏の創出と考える事もできます。
そしてもう一つの特徴は持続可能性に重きを置いている点です。
持続可能性については次項以降で述べさせて頂きます。
なぜ「里山資本主義」なのか?
マネー資本主義の限界
私も都市部に住んでますが、衣食住に関わるもの全て、エネルギーなども全てお金で手に入れています。何も自給自足を行なってません。
そういった生活が日本ではそれが当たり前になり、結果、都市部に人口が集中して地方の過疎化が進みました。
その結果、食料について言えば日本の食料自給率は年々低下し、耕作放棄地は増え、高齢化も進み、地方は将来消滅する可能性のある自治体まで出てきました。
これは「マネー資本主義」が限界に近づいている事を示唆していると思います。
エネルギー分配や効率性を求め続けた結果、都市部に人口が過剰に集中し地方が荒廃する結果となりました。
都市部に人口が過剰に集中した都市部での弊害は言わずもがなです。
地方でも人口減少に伴い農林水産業など地方の主要産業も衰退する結果となりました。その結果、食料の自給率も下落しました。
このままではお金を出しても食料が買えない、または食料が高騰する未来が現実味を帯びてきました。
日本が進むべき方向性
私は以前から疑問を持ってました。
「少子高齢化が進む日本でいつまで経済成長が可能なのか?」
皆さんはこのような疑問を持たれませんか?
経済成長率が鈍化した日本は今後、GDPなど様々な指標で他国に抜かれるかと思います。これには様々な要因があると思います。政治の失敗もあると思います。
ただ、現実を直視すると経済成長も重要ですがこれからは持続可能性、すなわち「成長から持続」という価値観が重要になってくると考えてます。
企業も同じだと思います。持続性、すなわち「ゴーイング・コンサーン」が前提かと思います。
その為には成長が必要になるかもしれませんが、全ての企業が飛躍的な成長を成し遂げられる訳ではありません。そう考えるともう少し持続可能性を重視する経営があっても良いと言えます。
話は飛びますが、日本の地方自治体も同様です。
もはや消滅が危惧されている多くの地方自治体があります。
日本が進むべき方向性として、持続可能性を重視している「里山資本主義」的な考え方は一つの方向性であると私は考えてます。
「里山資本主義」による地方創生
地方創生とはよく聞く言葉ですが、私はこの言葉には正直しっくりきていません。
「地方」の対義語は「中央」とか「都市」といった言葉を連想しますが、「地方創生」と言う言葉を聞くと何か中央集権的な機構の中で中央政府が地方に対して何か活性化する施策をする、または予算を付けるといったイメージを持つからです。
「地方」が自らの力で活性化する
これが地方創生の根本の考え方だと思ってます。
地方が自らの力を保つためには持続可能な経済圏の確立が必要になります。その経済圏を確立するのはある程度の規模、すなわち人口が必要になります。
やはり、首都圏集中を是正し地方に人を戻す動き、UターンやIターンなど都市部から地方への人の動きを活性化させる事がキーポイントになります。
本書では日本各地で地方発で行われている様々な取り組みが紹介されております。
共通しているのは、地域の特色を活かし、その地域にしかない資源を有効活用し、地域の魅力を発信する事で人々に興味を持って貰い、都会から人が来る流れを作る。
その中から移住希望者も出てきて、地域の方々がそういった移住ニーズにも対応していく事で移住者が増加する。
そして、都会で様々な経験や技能、知識を持って移住してきた人材を有効活用し地域の地元人材と相乗する事で新たな施策を打ち出していく。
この流れってどこかで聞いた事ないですか?
そう、経営資源の乏しい中小企業が自社の強みを活かしていくために採る戦略のセオリーと似てるんですよね。この点が「里山資本主義」と中小企業診断士が親和性があると私が思った所以になります。
地方創生✖️中小企業診断士
この組み合わせは珍しい組み合わせではないと思います。
ここに「里山資本主義」による経済圏の確立と言った概念を取り入れると更に広い視野でこの課題に取り組む事が出来ると考えます。
前項でも書きましたが、今、地方が生き残っていくために採るべき戦略は中小企業が採るべきそれと親和性があり、それゆえに中小企業診断士が活動できる範囲も広がると予想してます。
地方活性化の戦略
企業経営で必要な経営資源として、ヒト・モノ・カネ・情報とはよく言われます。
これを地方の戦略に当てはめていくと各々は次のようになると思います。
ヒト
Iターン、Uターン等、都市部から移住した会社経験や資格、ITスキル等を有する人材や元々地方で農林水産業に従事し技能や知識、経験などを有する人材
モノ
地域の特産品、農林水産資源、伝承されてきたノウハウ、歴史的、伝統的価値を有する有形、無形の文化財などその地域で長年培われてきた資源
カネ
ここ最近で一番大きな変化があったのはカネ(資金)ではないでしょうか。従来からある地元の信金、銀行や国や自治体からの補助金、それに加えてクラウドファウンディングなど新たなツールも広がり、資金調達面のハードルは下がりつつあると思います。
情報
言わずもがなですがインターネットの普及で都市部と地方での情報格差は無くなりつつあります。
他方で、地方も都市部と同じ位、情報発信が重要になりつつあります。従来の地方には居なかった移住者人材などを活用した情報発信は重要なツールです。
ヒト・モノ・カネ・情報の観点から言えば地方にも経営資源はあります。
今まではこれらをまだまだ上手に使いこなせてなかった部分はあるかと思います。
都市部からの多様な人材が地方に移動する事で様々な可能性が地方にはある気がしてなりません。
こういった資源を活用しながらの地方が採るべき戦略の立案は中小企業診断士の仕事との親和性は非常に強いと感じています。何かおもしろくないですか?
私だけですかね…。
「里山資本主義」経済圏
「里山資本主義」経済圏の拡大
里山資本主義を推進する為にはまずその経済圏を拡大することが重要であると前項でも述べました。
経済圏と言えば大げさですが要は同じ価値観をもった仲間を増やすと言うことです。
マネー資本主義的な価値観だけでなく多様な価値観が広がる中で、今は地方ならではの生活環境を求めて移住する人口はコロナ禍もあり増加傾向にあるようです。
もちろん、移住までしなくても都市部に住みながらこの経済圏に参加する事は可能です。
インターネットを通じて様々な地方の特産品や農林水産品を直接購入することも今では可能です。そうする事で地方の生産者に直接お金が流れます。
また、地方でさまざまな地元の人間や移住者が行なっている様々な振興施策に対してクラウドファウンディングを通じて出資することも出来ます。
これらの行為も立派な経済圏への参画だと言えます。
賛否両論あるふるさと納税ですが、私はこの地方経済圏への参加と言う観点から言えば賛成です。
少し見方を変えれば、都市部に住みながらも例えば家庭菜園や近くに畑を借りて農産物を栽培する事も経済圏への参画と言えます。
衣食住の全てをお金で購入するのではなく、自らで自給する事は都市部にいながらも里山資本主義的な経済活動になると思って頂ければそんなに難しい事を言っているのではないと感じて頂けるのではないでしょうか?
「里山資本主義」の今後は?
私は「里山資本主義」はまだまだ現在進行形だと思ってます。
色んな場所で様々な試みが行われてきて、今も行われ、これからも続いていくでしょう。
種蒔きからはじまり、それが実を付けて結果が出るまでには長い時間が必要です。
これを支える一つは価値観の多様化だと思います。
良い大学を出て良い企業に勤めるのが良いという考え方がある中で、若者の間では自分で起業して新たにビジネスを開拓していくといった価値観も徐々に広がってきている気がします。
働き方改革とインターネットの普及で働く場所も自由に選べるようになってきました。
一旦は地方から都市部に出て働く事には変わりはないかもしれませんが、その後に故郷やふるさとに戻って働いたり、住環境を求めて好きな地方に移り住む流れもコロナ禍を経て出てきつつあります。
画一的な価値観から多様性のある価値観への変化が、都市部への人口集中から地方への人の流れを作る基礎になってくると思います。
我々の親世代が築いてきた成功体験だけでは右肩上がりの経済成長が難しくなってきた今の日本ではこういった価値観の変化は意外と早く進むのではないでしょうか。
まとめにかえて
拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。
この本は私が長年疑問を持ち続けてきた、
「少子高齢化が進む日本でいつまで経済成長が可能なのか?」と言う問いに対して一定の答えとその方向性を示してくれた本だと思ってます。
地方創生を「里山資本主義」と言う経済圏の観点から考える事でこの取り組みが一過性のものでなくなり、またどの地方にもチャンスがある事を知り、そして私が志した中小企業診断士という資格を活かせる分野もまたこの辺りにもありそうな事に気付かせてくれました。
もともとアウトドアや田舎暮らしに興味を持っていましたので、
今後も「里山資本主義」✖️「中小企業診断士」と言う掛け算で何か地方の活性化に貢献できればと考えています。
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