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#2 ムスカはなぜ3分待ったのか

お恥ずかしい話、ぼくは「天空の城ラピュタ」を見たことが無かった。

スタジオジブリの映画はそれなりに好きで、「千と千尋の神隠し」とか「ハウルの動く城」なんかはDVDも買って擦り切れるほど見ていたほどだ。

だけども、ラピュタは一度も見たことが無かった。なぜ見てこなかったのか、自分でも本当に不思議である。

小学校の頃、毎朝クラスで歌うことが義務付けられていた。その時に歌わされていた曲の一つにラピュタのテーマソングである「君を乗せて」があり、この歌は今でもしっかりはっきりと歌うことが出来る。

テレビの金曜ロードショーで何回も何回も上映されては、終盤の「バルス」のタイミングでtwitterのタイムラインが埋め尽くされる様子を、ぼくは何度も目の当たりにしている。

ムスカの「見ろ人がゴミのようだ」「最高のショーだとは思わんかね」なんていうセリフは至る所から聞いていたし、ぼく自身も使っていた。

つい先日、まだ横浜で生活していた頃なんかは「三鷹の森ジブリ美術館」に足を運んで、美術館の屋上にあるロボット兵の写真を撮ってはインスタに上げて悦に入っていたくらいだ。その写真を今回はヘッダーにしたいと思う。

「ラピュタを見る」という行為以外の全てにおいて、ラピュタへ関心を寄せ続けていたのに、見る事はなかった。今思うと本当に意味が分からない。

それが昨日、とうとう見たのだ。ラピュタを。

きっかけはぼくの彼女である。

ぼくには大阪で一緒に暮らす彼女がいる。大阪への熱烈な興味に加えて、この子の存在がぼくを東京生活から脱出させ、仕事を辞めさせ、大阪での生活へと向かわせたのだが…それはまた別のところで書こうと思う。

彼女が好きなスタジオジブリの作品は「猫の恩返し」である。昨日たまたま気が向いて、二人で猫の恩返しを見ようという話になった。ジブリの作品はNetflixなどのサブスクにおいていないので、久々にDVDをレンタルしにTSUTAYA野田阪神店に向かった。

陳列棚から「猫の恩返し」を見つけた時、隣に置いてあったラピュタが目に入った。

正直悩んだ。「え?このタイミングで見るの?」という悩みである。

皆さんは芸人のかまいたちの「自慢」のネタを見たことがあるだろうか。「僕はとなりのトトロを見たことがないんです」という自慢にならない自慢から始まるネタなのだが、その中で「僕はこれからトトロを見る事も出来るし、見ないこともできるんですよ!!」というセリフがある。

なんのこっちゃと思うが、まさしく今のぼくはその状態だった。「初めてのラピュタを見る」というイベントの主導権が自分にある、という心持ち。かまいたちの山内さんの気持ちが痛いほどよくわかった。

だが見た。DVD1枚110円のキャンペーン中だったからだ。

ここまで逡巡していたのが大変お恥ずかしいくらい、あっさりラピュタのDVDを手に取っていた。人間とはこういうものである。そうでしょうが。

家に帰り早速ラピュタを鑑賞する。正直、「ラピュタ本編を見る」という以外のあらゆることでラピュタへの知識を蓄えていたせいで、既視感しかなかったが、それでも「あぁ、見てよかったなぁ」としみじみ思ったわけである。

特にロボット兵のいじらしさに心を打たれた。あんなに強いロボット兵。優しい心を持っていて、動物や植物と共生しながら、確実に来る終わりを待っているなんて。強く優しい、ということはなんて素晴らしいんだろうと思った。ロボット兵のフィギュアとか集めたくなった。推せる。

そして、タイトルの思いに行きついた。ムスカ大佐は終始余裕ぶっこいていたのだが、この余裕は一体どこから来たのかが謎である。「これがラピュタの雷だ!」とかやっている通り、ラピュタがとんでもない力を持っていたことはムスカ自身が一番よくわかっているのだろう。

それなのに、飛行石を持ったシータを3分待っちゃ、「ころしてくれぇ」って言っているようなものではないか。

ここから考察の時間だ。考察といっても本当にくだらないのであんまりあてにはしないで欲しい。

ムスカは「ラピュタを葬りたかった」のではないか。そう考えると筋が通る。

ラピュタは絶大な力を持っており、この力を誰かに悪用されると国の存続にかかわる。そのためにラピュタを破壊したかったが、外からでは到底破壊することはできない。自壊させるしかないのだが、合言葉を知っているのはシータだけ。

シータがラピュタにたどり着けば、彼女はラピュタを守ろうとするだろう。であれば、ラピュタがいかに危険なものかを知らしめた上で、彼女を追い込み「ラピュタ危険だし、壊そ」という思考に至らしめることが最善の策、と考えたのではないだろうか。

自分の命を賭してまで、彼は国の未来を守るために動いたのだ。

そんな彼は最後に「3分間待ってやる」というが、どんな気持ちだったのだろうか。彼としては「3分間待ってくれ」だったのかもしれない。自分の命はあと3分で終わる。その気持ちの整理をつけるために…。

…まぁ、そんなことはないと思うし「最高のショー」とか「人がゴミのよう」とか結構なこと言ってくれちゃってるので、やられてやむなしって感じだ。

見てよかった、ラピュタ。


…え、猫の恩返し?

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あなかま
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