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【小説】アライグマくんのため息 第4話 「バレンタインデー」⑤
自分が背が高いことにコンプレックスを持ち、短所だと決めつけてたリカ。そんなリカの身長のことを、「長所」で「魅力的」だと褒めた男がいた。リカの友人の軽上(きんじょう)だ。
軽上は、リカとは中学校以来の友人で、リカのよき理解者であった。正確に言うとリカの初恋の相手であった。よせばいいのにリカはそいつのことを6年以上も思い続け、最近振られたばかりである。
オレは軽上とは一度もあったことはないが、話によれば、身長はリカよりも相当低かったらしい…。普通の男の子はリカが横に並ぶと自分が低く見えるからと言っていやがるそうだが、この軽上だけは違ったらしい。
だが、最近自分よりも身長の低い女性と結婚し、友人に
「やっぱりさぁ、オンナは小さい方がかわいいよなぁ。」
と言っていたと言う。その話を軽上と共通の友人から聞いたリカは、えらく傷ついたらしい。その話を聞いて数週間は、ロクに食事をとらなかったと言う。
福岡の両親の家に行ったとき、オレは、姉の「ちび」とママりんの会話を偶然聞き、そのことを知ったのだが、あの、食い意地の張ったリカがロクに食事を取らないと言うのは、よほどのショックだったんだろうと思う。
そんなことがあってからというもの、リカはますます身長のことを気にするようになったらしい。だから、今回デートをしてから小口が連絡してこないことを過去のトラウマに結び付けて、どっぷり、ネガティブモードに浸りきっていた。
だが、そんなリカの気分を一瞬で吹き飛ばすような出来事が起こった。
いつものようにリカは食事を終え、「ちび」が会社の愚痴をこぼすのをふんふんとお茶を飲みながら聞いていた時のことだ。突然電話が鳴った。
「あれー、あたしかな=?」
「ちび」は受話器を取った。「ちび」の愚痴から解放されたリカは、この時とばかりにそそくさと自分の部屋に帰ろうとしたその時、
「はい。少々お待ちください♪妹がいつもお世話になっております。」
「リカちゃん、小口さんから電話だよ♪」
と、目を三日月にして、笑いを必死にこらえながらリカに受話器を渡した。
リカはちょっと照れくさ層に、
「電話、あたしのところに回して!」
と言って、自分の部屋に逃げるようにして入っていった。
それから30分経っただろうか、部屋からリカが出てきた。
「この間のバレンタインデーに渡した、チョコレートのお礼にホワイトデーのお返しをしたいって。そういえば今日、ホワイトデーだったんだ…」
かなり鈍感なリカは気づいていないようだが、この日をきっかけに、リカは、「むっつり君」こと、小口のしたたかな戦略にまんまと引っかかり、ついには小口と付き合うことになった。
そういえば、オレは結構ひどい目に遭ったのに、なんでチョコレートをリカはくれないんだ?はん?…まったく、世の中不公平なのである。
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