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音楽とセックスしよう
最初に言っておきたいのは、全く卑猥な記事ではないということと、僕は非常にそれ自体の経験が乏しいということだ。
あくまで僕は音楽の話をしているということを頭に入れて読んでいただけるとありがたい。
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ふと無性にBon Joviの「The More Things Change」という非常にマイナーな曲を聴きたくなり、部屋の隅のCD棚からBon Joviのベストアルバムを手に取り、コンポに入れて、歌詞カードを見ながら聴いた5月最後の夜。
「いろんなものがどんどん変わっていってるけど、どんなに世間がぐらついても君は君、俺は俺」
そんなテーマの曲。
曲の歌詞に
「Instead of records now it's MP3s(レコードの代わりにmp3になった)」
という歌詞があって、そういえば最近全然CDで音楽聴いてなかったなと思って、こんな記事を書いている。
なぜレコード、CDを聴くのか
今じゃCDの再生機器も持ってないという方もたくさんいらっしゃるのではないだろうか。
僕は高校生の時、CDのジャケットと歌詞カードを眺めながら、CDをじっくり楽しむ時間が好きで、割と家にいるときはCDを聴いていた。
さらにレコードとレコードプレイヤーを買い、針を落として音楽を聴いた。
あの、アーティストの魂と、言葉とメロディーを通して対話しているような感覚がたまらなかった。
まるで濃密な対話としてのセックスをしているような。(それ自体の経験は非常に乏しいが)
みんなはそんな感覚になったことがおありだろうか。
スマホの音楽配信サービスでどこでも世界中の音楽が聴ける時代になった。いい時代だ。音楽がより手軽に誰でも楽しめるものになった。
僕も外ではめちゃくちゃspotifyで音楽を聴く。
ただ何か寂しくて、それが、CDをゆっくり聴いてる時の音楽との濃密な対話をしている感覚がない。
手軽さゆえに音楽が空気になってるような感覚が少し寂しくなった。
音楽がみんなの耳に届くまで
音楽が実際みんなの耳に届くまでどんな道を通っていくのか、意外と知らない人も多いのではないだろうか。
多分細かいところまでは僕も知らないので、僕が作った曲の場合はこんな感じ。
歌詞orメロディーが浮かぶ(どっちが先かはそのときどき)
↓
曲の全体イメージができる
↓
PCのDTM(デスクトップミュージック)ソフトでレコーディング開始
↓
ドラム、ギター、ベースなど楽器を入れていく。(アレンジ)
↓
ボーカルを入れる
↓
各楽器の音の調整、全体の音のバランスの調整(ミックス)
↓
スピーカー、イヤホンなど想定される再生機器で音を確かめる
↓
他の曲と音量を合わせる(マスタリング)
↓
配信
↓
(PVの製作、CDジャケットの製作)
こんな感じで、僕は作詞作曲から、配信、PVの撮影編集まで一人でやっているので、多分全行程を終えるのに早くて1週間はかかる。
悩める人間
「こんな工程たくさんあるんだね、大変だね。だからお金払って曲を買おう」
そんな話をしたいわけではない。
なんなら、別にちゃんと許可さえ取ってくれれば全然無料で使ってくれていいし、なんなら使って欲しい。もうバンバン使って欲しい。もうそれはもうバンバン。
僕が言いたいのはそうではなくて、一番最初の「歌詞を作る」という工程において、「アーティストも悩めるただの人間なんだ」ということ。
日々のしんどいこととか、泣きそうになること、世間への愚痴、元カレ元カノへの愚痴、報われない恋愛。
そんなみんなと同じ悩みを言葉にして、歌にして作っているのがアーティストであって、それをどうにかみんなに聴いて欲しかったり、寄り添って欲しかったり、共感できる誰かに届けたかったり、寄り添いたくて歌を作ってるんだと思う。
本当に響く曲っていうのは、自分のことを歌ってるような感覚になる曲だと思っている。
だからその時々によって響く曲は違うし、響くアーティストも違う。
ただその曲はやはり妄想じゃ作れないと僕は思う。
アーティストもそんな悩みを抱えたり、そんな経験をしていたり、もしくは今していてたり。
そんな実際の等身大の悩める人間として紡ぐ歌詞と、歌があるからこそ、僕ら悩める人間に響く曲になるんだと思う。
ただアーティストがそんな悩める人間だと知るのに、聞き流していると中々気づけないのだ。
大概響く音楽と出会うのは、その音楽と濃密な対話、セックスのような対話をしているときなのだ。
音楽とセックスしよう
手軽にアプリで流しながら聴く音楽は、例えるならAVみたいなもんだと思ってる。
ただ眺めて、マスターベーションをして、ちょっとすれば3日前に見たAVなんて忘れてしまう。どんな内容だったかとか、どんな女優さんだったかとかもう記憶の彼方だ。
なんとなく今日の気分に合うのを選んで、それで眺めておしまい。
(AVをバカにしてるわけではない、てかめちゃくちゃお世話になってる)
ただきっとセックスの方が安心感だったり、相手との対話は深いだろう。(そもそもAVを見てる時に相手などいない、ソロプレーだ)
ゆえに「セックスは究極の対話」といわれたりする。(らしい)
CDを取り出し、コンポに入れ、またはレコードを取り出し針をゆっくり落とし、歌詞カードを眺め、CDジャケットの絵や写真を見て、作品と自分だけの空間を作ることで、深く濃密な音楽との交わりができる。
そしてその中で、
すごい人でもなんでもない、ただ悩めるアーティストの思いに触れ、自分の思いに触れられ、お互いを慰め合うのだ。そして明日にまた向かっていく。
音楽が手軽に楽しめる時代、何かをしながら聞き流せる時代。
そんな時代だからこそ、CDやレコード、持っていなければ、サイトで歌詞を見ながらでもいい、たまには作品と二人きりの時間を作って、ぜひ深い対話をしてみては。
anagon
(photo: Shotaro Mitsuishi(twitter:@Mzwzera)