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紡いだことばたち。
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2020年5月の記事一覧

詩 33

空が泣いた日
娘は踊る
大地を蹴り
どこまでも高く

スカートの裾が果てしなく拡がる

雨粒の拍手が
娘を包む

娘は歌い、踊り続ける

足が潰れ
声が枯れても  

いつしか頭上には
光り輝く七色
それにすら気づかずに
娘は踊り続ける

黒髪を靡かせて

魂の赴くままに

やがて、朝が娘を迎えに来る
肉体はとうに明け渡した

その魂ひとつで
娘は踊り続ける

内側から渾渾と沸き続ける熱い泉

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詩 27「無題」 本文

喉の渇きに目が覚める
闇に包まれて
横たわる身体  

夜が雨音を強くする
あるいはそれは
内側の
寂しさに呼びかけてくる  

ふいに、耳に微かな泣き声
抱き上げた腕の中で
乳を探す幼児は
全身で
希望を象っている
睫毛のひとつひとつに
命を宿らせて  

死んでいく星と
誕生する星の
命の巡りを
眼裏に描く  

いくら言葉をさがしても
端から零れ落ちていく  

振り返っても届かない昨日は

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