250gの魔法の癒し
フランスに住んで16年。
すっかりこちらの生活に慣れていても、日本が恋しいという気持ちはいつまでたっても変わりません。
たっぷりのお湯にゆっくりつかりたい、白いごはんが食べたい、お刺身が食べたい、おでんが食べたいなどなど。日本に思いを馳せると、止まらない。
そんな私を癒してくれるのは…。
可愛いマカロンでも、有名ショコラティエのチョコレートでもありません。
パン焼き窯から出されたばかりの、焼きたてほかほかのバゲットです。
🎶250gの魔法🎶
2022年11月、フランスのバゲットはユネスコ無形文化財に登録されました。
”250gの魔法であり、完全なる250gである”と、マクロン大統領は申請時の書類に応援のコメントを添えていました。(✳︎1)
250gというのは、法律で決められたバゲット1本の重さです。
バゲット(Baguette)はフランス語で棒という意味なのですが、いろいろな『棒』に使われます。
・指揮棒
・お箸
・魔法の杖
・パンのバゲット
魔法の杖とパンのバゲットをかけたのかも知れません。
まさに食べる人を幸せにする魔法の杖。
私にとっては、日本への里心をなぐさめてくれる、まさに魔法の癒しです。
(✳︎1: 2022年11月30日付LeParisien紙)
🎶つまみ食いせずにはいられない🎶
夕方、子供たちと公園で遊んだ帰りに、近所のパン屋さんへ。
夕食用にバゲットを注文すると、タイミングが良ければ、窯から出したばかりのバゲットを細長い紙の袋に入れて渡してもらえます。
この時間のパン屋さん付近は、出来立てのパンのいい香りが漂っています。
夕食用に買ったばかりのパンですが、あまりのいい香りに、私も子供たちも食べたい気持ちを抑えられません。
少しだけ、と言ってちぎったパンをそれぞれかじると、みんな笑顔でおとなしくなります。
外側はパリパリと軽い食感、中はふんわりと甘く柔らかくて、もうひとかけ、あともう少し、といいながら、帰り道で半分以上なくなってしまうことも。その場合、引き返して晩ごはん用に再購入です。
🎶食卓の主役ではないけれど、欠かせない🎶
そのまま食べてもおいしいバゲットですが、食卓ではスープや煮込み料理のおともに。お肉やお魚を焼いた料理のソースをきれいに拭き取って食べたりします。
ちぎったバゲットでお皿のソースまで綺麗に拭き取るのは、料理がおいしかったことの証。
主菜を食べ終わっても、バゲットが残っていると、チーズとともに、またぱくり。そして、チーズがあるからパン→パンがあるからチーズ…という食いしん坊のループです。
ここは心を鬼にしなければ、お腹がはち切れそうになります。
🎶おいしいバゲット🎶
最後に、おいしいバゲットとは。
パン焼き窯で一度にたくさん焼いているので、焼き加減がさまざまなのです。
・Bien cuite(ビヤン キュイット) しっかりよく焼けたもの
・pas trop cuite (パ トロ キュイット) 軽い焼き上がりのもの
このように個人やご家庭の好みによって、購入時に希望を伝えることはできます。パン屋さんでは、できるだけ希望に合う焼き加減のものを探してくれますが、基本は先着順なので、閉店に近い時間に駆け込むと、ハズレ、ということもあります。
我が家では、皮のパリパリ感が好きなので、pas trop cuite(パ トロ キュイット)を注文します。
ディズニーの映画、『レミーのおいしいレストラン』でコレットがリングイネ に語るおいしいバゲットの見分け方をご紹介して、締めくくります。