旅のつづきを旅する。
もし、彼女に出会っていなかったら、わたしが「地元」を考えることはなかったと思う。
彼女と出会ったのは、イギリスのオックスフォードという街。同じ語学学校に通うともだちだった。
わたしが学校に通いはじめてしばらくたった頃、「わたし、京都に行ったことがあるんだ」と彼女が話しかけてきてくれた。どこに行ったのか聞いてみると、「清水寺」「金閣寺」「嵐山」という観光名所が並んだ。京都観光の鉄板コースだった。「うんうん、わかるわかる!わたしも行ったことあるよ!」と返事をした。
「それから・・嵐山からトロッコ電車に乗ったんだ」
「終着駅まで乗った?」
「乗ったよ!」
「その『亀岡』がわたしの地元なの!!」
とにかくもう、うれしくてうれしくて。イギリスで「地元」の話ができることが、こんなにもうれしいとは思わなかった。自分にとっても、あたらしい自分を発見した瞬間だった。
お別れの日、「今度は『亀岡』で会おうね。」と彼女は言った。わたしはいつか彼女を案内できるように、帰国してから「地元」を知る旅をはじめた。
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地元を走りまわって1年半が経った頃、彼女がほんとうに「亀岡」に遊びに来てくれた。商店街にある150年続く酒蔵、大好きな近所のパン屋さん、わたしの家と家族、トロッコ列車。
イギリスにいた頃のことや映画「君の名は。」、お互いの仕事のことなどいろんな話に花を咲かせた。一緒にすごしながら、こころの中でずっと泣きそうだった。
自分の地元を、大切なともだちが訪ねてくれる。それだけで、いつもの景色が違うように映った。
1年半、迷いながらも走り続けてよかった。はじめて自分の仕事に誇りをもてた瞬間だった。
お別れの日、「今度は『タイ』で会おうね。」とわたしは言った。そして今年の1月に彼女のもとを訪ねた。
今度はいつ会えるかな。
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