今年もワールドカップイヤー 第3のリベロ Vol.25
先月以来、再びJ SPORTSを視聴することになった。およそ半年間のブランクを挟み、2シーズン目を迎えたジャパンラグビーの最高峰を愉しむためだ。当面、WowowとDAZNと併せ3つの有料サービスの支払いが並行する。2年連続の値上げに踏み切った以上、DAZNにはラグビーも含めコンテンツの拡充を望みたいのが本音だが、合計で月額7,000円以上を負担することになっても、リーグワンは存分に満足できるものを提供してくれている。
先週末は、ワラビーズのポイントゲッターによって衝撃のトライが生み出された。トヨタヴェルブリッツとの好カード、埼玉パナソニックワイルドナイツのオーストラリア代表・マリカ・コロインベテは、日本代表経験者、野口竜司が蹴り上げて戻したボールを肩のあたりで収めるや瞬時に加速、タッチラインの外へ押し出そうと猛追する相手を飛び跳ねながらかわし、インゴールの隅にボールをグラウンディングしてみせた。"サイクロン"の異名をとるこのウィング以外にも、リーグワンには各ポジションで世界最高級の選手が名を連ねている。同じ埼玉にはロックのルード・デ・ヤハーが、横浜キャノンイーグルスにはスクラムハーフのファフ・デ・クラークが今季から新加入、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフッカー、マルコム・マークスや静岡ブルーレヴズのフランカー、クワッガ・スミス、2019年にワールドラグビー年間最優秀選手に選出されたトヨタのフランカー、ピーターステフ ・デュトイも健在で、ワールドカップのディフェンディングチャンピオン・南アフリカ代表の面々は数多い。フットボール(=サッカー)ならバロンドール受賞者、野球ならメジャーリーグのタイトルホルダークラスの選手たちが、トップフォームを維持した年齢で参戦し、毎週のように鎬を削る。日本国内のスポーツシーンで、世界トップレベルの競演が拝めることなど滅多にない。2000年代半ば、総合格闘技PRIDEの全盛期に匹敵するほど貴重な対戦が繰り広げられているのが、このリーグワンだ。
前節は、今季からディビジョン1に昇格した三菱重工相模原ダイナボアーズが、東芝ブレイブルーパス東京に競り勝った。5点ビハインドで折り返し、逆転トライのあと再び勝ち越されながら、途中出場の石田一貴がペナルティゴール(PG)を2本とも成功。互いに前身の時代なら、三菱重工が東芝府中に勝つことは考えにくかったが、いまや各チームの戦力は拮抗している。さらに1週間前には、東京サントリーサンゴリアスが、かつての指揮官・沢木敬介体制で3年目を迎えた横浜と対戦した。コベルコ神戸スティーラーズから移籍した元オールブラックスのスタンドオフ、アーロン・クルーデンがデ・クラークに危険タックルを見舞い前半で退場、残り半分以上を14人で戦いながら、田中澄憲が新指揮官に就いたサンゴリアスが勝ち切った。リーグの全試合が観られるJ SPORTSではディビジョン2も放送され、昨年末に視聴したのが豊田自動織機シャトルズ愛知と日野レッドドルフィンズの対戦。実のところ多くを望んではいなかったが、前半に3トライを浴びた愛知が盛り返し、PGで再逆転されるも、直後のトライで勝利。どんな対戦カードでも結果が読めず、数的不利を強いられても勝つチームがあり、2部リーグまで面白いとは、ますます見逃せない。
2003年に発足し一昨年まで開催されたトップリーグ時代から、シーズンに1度は地元で観戦してきた。最寄り駅を通った乗車券を提示すれば無料で観戦できる日さえあったが、涙ぐましい集客努力の甲斐もなく、スタンドは閑散としていた。2019年、日本で開催されたワールドカップが成功を収め、わが国のラグビー人気も再興のときを迎えたかに思えたが、今年がそれ以来のワールドカップイヤーであることを、どれほどの人が認識してくれているのだろう。先月ワールドカップを終えたフットボールにも相通ずる課題だが、ビッグイベントで生み出された熱を日常に波及させることが、いかに困難か痛感する。私にとってフットボールは趣味を超えたライフワークだが、1月も下旬に入ろうとしている現在のところ、ラグビーはそのフットボールよりも多く観ている。ワールドカップイヤーのリーグワンは、それほどまでに愉しい。
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