4文小説 Vol.1
1月末に産まれて命日はクリスマスイブ、堅苦しくて融通は利かなかったけれど、真正直で自分に厳しかったあなたには、生誕も最期も真冬がふさわしかったのだろうか。
幼かった私が起きる前に出勤し、寝た後で帰宅するような日々、中学校の教員として子どもの目にも懸命に働いた甲斐あって校長に昇進した頃、思春期を迎えた私は家庭を顧みないような姿勢に反感を覚えていつものように辛く当たってしまったけれど、未熟で不安定な心は、きっとあなたの優しさに甘えていたのだ。
定年を目前に59歳で亡くなってから昨年末で17年、年老いた姿を見せぬまま還暦も待たず逝ってしまったあなたが惜しまれるのは、生きているうちにゆっくり休んでもらえなかったことと、いまだによく行き詰まる私の人生において、聞いてもらいたい言葉が行き場を失ったこと。
生きていれば明日で喜寿、私生活が疎かになるまで働けるほど教師はあなたにとって天職だったのでしょう、20歳で死に別れた私も不惑が迫るまで齢を重ね、やっとそう思えるようになっている。
―「父のこと」