ゴブリンですがなにか
「ゴブリンモード」
オックスフォード英語辞典の「2022年の言葉」に、ネット投票でぶっちぎりで選ばれたスラングらしい。
パンデミックでリモートワークが日常的になり、誰も見ていないのをいいことに髪はボッサボサ、もちろんすっぴん、ヒゲ剃らない、上下たるんたるんのスウェット(なんならしょうゆのシミさえついている)で1日過ごす。
ふとんのなかでNetflix観ながら仕事したり、足繁く通っていたジムになんてもちろん通わなくなったり、怠惰路線まっしぐらな様子らしい。
おもしろいのが「ゴブリンモード」は2022年の春頃から拡散されはじめたってこと。まん防やら緊急事態宣言やらがちょっとずつ緩くなってきたころじゃないかしら。
「早朝にウォーキング、きっちり身支度して昼夜仕事に励み、終業後には勉強、食事は節制していたわたしには戻れない、戻りたくないよね」
「インスタやTikTokに載せるキラキラした自分は編集されたものであって、本物はこっちなのよね」と、自堕落な自分を安心させるような言葉だともされている。
きっとゴブリンモードで過ごしたい多くの人は気づいちゃったんだろうね。
社会(の変化)に適応する難しさ。
職場での外交活動でどれだけHPを消費するか。
そこまでして人に嫌われないための努力も、意外と必要なかったことにも。
ゴブリンモードが流行る前からゴブリンやらせてもらっているわたしとしては、仲間が増えて嬉しいよ。
ところがある記事には「ゴブリンモードから立ち直るにはどうすればいい?」と書かれているのよね。
しかも「現実世界に復帰するためには」とかいって。
おいおい、結局ダメなもの扱いじゃないの。
立ち直りたい人は別に立ち直ったらいいと思うけど、「立ち直るべきもの」とするのであればそれはちょっと、ゴブリン全否定じゃないの。
たしかにやるべき仕事をおろそかにして、無気力で、Netflix1日観ているような状態は問題かもしれないけれども、ふとんのなかだろうがやる気はあって仕事をきちんとこなしているのなら良いんじゃないの?
「ゴブリンのままでいたい」という気持ちはなにか間違っているのかね。
まったく、失礼しちゃうわ。
「ゴブリン=ダメなもの」っていう否定がまたしんどくなっちゃうんじゃないかなあ。
誰にだってね、大なり小なり心のなかにゴブリンな自分を飼っているはずなのよ。
「お前は出てくるな!」って、小さな小さな檻に閉じ込めたらかわいそうよ。それも自分なんだから。
いっかい顔を出した感情は嫌でも「こんにちは」ぐらいの挨拶はしてあげたいよね。
職場で嫌なヤツとすれ違うとき、心のなかで舌打ちしながら「おつかれさまです」ぐらいは言う感じで。
満足したら引っ込んでいくと思うし。
もっとやさしくしてあげよ。