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思ってたのと違った申し訳なさ

「片道15分のスーパーに行き、昼ごはんを買って帰ってくる」
散歩の定番コースだ。

昼ごはんも、スーパーのパン屋さんで売っているチキンサンドと決めている。

ときどき季節の新商品で惹かれるものがあると、つい手が伸びる。
このあいだもアーモンドクリームパンなどという、なんとも魅力的な商品に出会い、気づけば買いものカゴに…。

さあ、おやつ休憩だ!と、コーヒーのお湯がわくまでのあいだにパンの袋をそっと開ける。
ひと口サイズに切ろうとしたそのとき、ぱらりとパンがほどけた。

パンじゃなくて、パイじゃないか。

パッケージをもう一度確認する。
やっぱりアーモンドクリーム「パン」と書いてある。
いやでも、さわってみて、食べてみても、紛れもなくこれはパイだ。

…思っていたのと違った。
とはいえ、パイ好きのわたしとしてはこっちのほうが嬉しい。
しかも生地がちゃんとサクサクなのがたまらない。

∽∽∽

「フリーランスとして活動しています」というと「好きなことを仕事にできていいですね」とうらやましがられることが、たまにある。

否定はしないが、決して楽ではない。

わたしの場合、「フリーランスになりたくてなった」というよりは、「フリーランス以外の選択肢が考えられなかった」のほうが近い。
なかば消去法的な決断だった。

フリーランスどうしで話していると、わたしのような経緯の持ち主は少なくない印象だ。むしろ「好きなことを仕事にできて最高!うぇーい!」といった人のほうが少ない。

でもフリーランス界隈から一歩外に出ると「好きなことを仕事にできていいですね」と言われることが多い。
そういうイメージなんだよね、きっと。
わたしももしフリーランスになっていなかったら、同じ発言をしていたかもしれない。

ただ、先ほども述べたとおり、実際にいわれる立場になってみると「100%間違いではないが、100%素直に肯定もできない」というのが正直な心境である。
言うほうにだって悪気はないだろうし、経験しなければわからないこともあるから、仕方がないとも思っている。

そう。経験しなければわからないことだらけだ。
でも、想像ならできる。

∽∽∽

ライターとして活動しているわたしがふだん書いている記事は、好きなジャンルというよりも、自分にとって書きやすいジャンルである。

まったく好きではないかと聞かれたらまあ、多少の思い入れはあるけれども、「めちゃくちゃ好きです」とまではいえない。

その一方で、好きなジャンルの記事を書いて活躍しているライターさんもいる。
わたしはつい、口にしてしまったのだ。

「仕事で好きなジャンルを書けるって、すてきですね」と。
それに対する返事はこうだった。
「うーん。でもいろいろと葛藤もあるんです」


…これはまるで「フリーランスっていいですね」と同じじゃないか!
すこし想像力を働かせればわかったことなのに、なんて浅はかな発言をしてしまったのだ!

すぐに謝ると同時に、自分を恥じた。

「いいですね」って、気軽に口走るものではないな。

もちろん、池上彰先生のいう「いい質問ですね」のように、なにか意見やアイデアに対して同意する意味での「いいですね」は別である。
彼氏ができたとか、大きな仕事が決まったとか、相手も嬉しそうに話していて、明らかに「いいですね」のときも別。

問題は、自分が抱いている先入観の「いいですね」だ。
「それってあなたの感想ですよね?」と返ってきてもおかしくない「いいですね」は、発する前に一度立ち止まる必要があると感じた。

もしくは「わたしはいいなあと思うんですが、実際はどうなんですか?」と、相手の実情に寄り添うこと。


想像力はことばの源だね。もっと働かせていきたい。
だってこの世の中、「思ってたのと違う」ことだらけだろうから。
見た目ではわからない、パンとパイのように。



今日も読んでくれてありがとうございます。
最近あなたがした「思ってたのと違う」経験は、なんですか?

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