リサーチ1. NFT×音楽〜ファンマーケティングでアーティストを救うRoyal〜
その昔、物々交換で成り立っていた人間社会で、貨幣という新しい概念によって等価交換がなされるようになるとの革命が起きました。
そして、現実社会の貨幣に次ぐ新しい革命として注目されているのがデジタル社会のNFT。
新しい概念故に法整備や認知がこれからですが、その可能性をa16zを始めとした名だたるVCからシリーズAで90億円以上の投資を受けたRoyalという海外スタートアップを参考に考えてみます!
▶︎新しい価値取引として注目されるNFT
2021年3月Twitter創業者ジャック·ドーシー氏の初ツイートがNFT化されて約3億1600万円で落札されました。
落札したシーナ・エスタビ氏は「これはただのツイートではない。数年後には、これにモナ・リザと同じくらいの価値があることにみんなも気づくだろう」と”新しい価値観の芽生え”を主張していたものの、1年後の再出品では1%の値付けで入札されています。
この価値の乱高下が大きい資産として取引が交わされる事例のようにNFTは未だ価値観のボラティリティがある概念ですが、それだけ従前の常識とは異なるデジタル社会ならではの価値観を培われていく概念として興味深いものがありますね。
▶︎NFTとは
NFT(Non-Fungible Token)とは、代替不可能なトークンのことを指し、所有証明書付きのデジタルデータです。
ビットコインなどの暗号通貨が代替可能(Fungible Token)であることに対して、NFTは唯一無二の価値が証明された資産として保有でき、資産として取引することができます。
その資産を流通させることで新しい価値取引の市場を構築することができるため、ゲームのアイテムやデジタルアート、トレーディングカード、音楽、各種の会員権、ファッションなど、世界中のさまざまな領域で新しいビジネスが立ち上がっています。
今回はその中で音楽の領域で新しい価値取引の市場を創造するRoyalを取り上げます。
▶︎Royal
NFTを活用することで音楽業界のビジネスモデルを変革しているスタートアップスの一つがRoyalです。
2018年にEDMアーティストの3LAU(Justin Blau)らによって、音楽の所有権の民主化を目的に立ち上げられています。
アーティストが発行したNFT(楽曲など)を購入したファンがそのロイヤリティ(著作権使用料、印税)を受け取れるという利益分配の仕組みそのものを変えることによって、アーティストとファンのそれぞれのメリットを変革しています。
シード期には、ピーター・ティール氏が運営するFounders Fundと、暗号資産に特化したベンチャーキャピタルParadigm(coinbase共同創設者のフレッド・エールサム氏とSequoia前パートナーのマット・ホワン氏が設立)から、1600万ドルから資金調達。
その3ヶ月後には、シリーズAでa16zをリードとして5,500万ドルを調達し、つまり日本円で累計で90億円以上の投資を受けています。
Royalで楽曲を提供しているアーティストThe ChainsmokersやNasも投資されています。
(余談:なお、目的が異なりますがUUUMがYouTuberに対してストックオプションを付与していたケースがあったり、資本政策を通じたスタークホルダーづくりは興味深い論点の一つだと思います。)
例えば、The ChainsmokersがRoyal上で発行したNFTを購入したファンは、Spotify上でThe Chainsmokersの楽曲が再生される度に、その収益の一部が還元されるため、楽曲をPRしてファンを増やすほど、アーティストとファン自身にメリットが生まれ、共同体として楽曲の売れ筋に当事者意識を持つことができます。
これは、NFTが唯一無二の所有権を保証できる技術だからこそ実現できるファンマーケティングの一種ではないでしょうか?
▶︎まとめ
Royalは、ストリーミング配信(Spotifyなど)の台頭によって、収益確保に苦戦(1再生ごとに0.5~1円+仲介会社へのマージン)しているアーティストを救い、アーティストとファンが支え合える仕組みをつくっています。
日本では音楽アーティストやレコードレーベルが保有する楽曲をNFT化し世界中に販売するThe NFT Recordsが立ち上げられたり、NFTを活用した新しい経済圏が築かれ、その中で価値の取引は行われ始めています。
価値観は十人十色でさまざまな賛否が寄せられる中、アーティストが本当に届けたいメッセージを作品に込めて、それに救われて感謝を込め応援していくファン同士の新しい取引関係が築かれていくのかもしれません。
NFTが引き出す人の新しい所有欲求によって、どのような取引社会が築かれていくのか、それによってRoyalの事例のように救われる人はどんな便益がもたらされるのか、新しい世界観に要注目です!
※web3.0時代の世界観を予測する手段として小説『ノンファンジブルミー メタバース時代の私は何者か』がお勧めです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?