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ケース17. ジョブクラフティング〜職務満足度を高めるコーチング〜

▶︎仕事を楽しむ文化をつくるには?

決まったことばかりをする仕事では面白みを感じらないものですが、同じ仕事をしていても人によって満足度は異なるものではないでしょうか?

経営の視点:
・現場が仕事にやりがいを感じて前向きに取り組めることが望ましい
・やらなければならない仕事のモチベーションを引き出すことが難しい

現場の視点:
・仕事を楽しむことができ、自分のためになっていることが望ましい
・単純作業や決まった範囲のみの仕事では面白くない

ウェアラブルセンサーを用いたヒューマンビッグデータを調査した矢野和男さんの著書『データの見えざる手』によると、人の働く幸福感を高めるのは、環境要因はわずか10%であり、50%が先天的な遺伝、そして、残りの40%が本人の日々の習慣や行動の選択によって幸福感が左右されるとされています。
つまり、個人の主体的な行動選択を引き出すことが仕事の満足度を高めると言えます。

そこで、今回は、セルフモチベートを支援するコーチング手法をジョブクラフティングという概念に用いて考察します。

▶︎ジョブクラフティング

個人が自発的に仕事のやり方や人との関わり方、仕事の意味付けの仕方を変えること。
2001年に組織行動論の研究者であるイェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授と、ミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授によって提唱。


人は、課せられた仕事を受け身でこなしているとやらされ感に陥り、モチベーションが下がり、パフォーマンスが落ちていきます。
その”やらされている”との受動的な感覚を、”自らやっている”との主体的な意識に変えることがジョブクラフティングのポイントです。

ジョブクラフティングは下記の3つがあります。

①タスククラフティング
:仕事の範囲や仕方を工夫すること
②関係性クラフティング
:仕事を通じて関わる人の対象や関わり方を工夫すること
③認知的クラフティング
:仕事に対する意義付けを工夫すること


ジョブクラフティングの代表的な事例がディズニーリゾートにあります。

元々、不人気で離職者も多かったパーク内を掃除するカストーディアルの役割を、単なる掃除係と捉えるのではなく、来場者をおもてなしする役割と認知的クラフティングで意義付けを見直し、バケツの水で地面にキャラクターの絵を描いたりするなど来場者をもてなす仕事を自発的に工夫するようにと、個々人のタスククラフティングを推奨したことによって、ディズニーリゾートの中でも人気の役割に変貌を遂げました。

それでは、現場のジョブクラフティングを引き出すには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか?

▶︎意義付けを変えて視野を広げる

ドラッカーの「3人のレンガ職人」の話において、3人の職人に対して「何をしているのか?」と質問すると、以下の3通りの回答があります。

1人目:「親方の指示でレンガを積んでいる」
2人目:「レンガで塀を作っている」
3人目:「人々がお祈りをするための大聖堂を造っている」

同じ仕事をしていても意義づけ次第で見えている目的が異なることを示すお話ですが、このように目的によって主体性が異なり、そこから生まれる工夫の発想も変わると考えられます。
例えば、1人目の職人はレンガを積むという単純作業以外のことはせず、2人目は塀を作るために作業の順番を工夫する発想は生まれ、3人目はお祈りをする建物を造るとの目的のために最適なデザインを考えたり、他の人を動機づけしたりする工夫が生まれる余地があるのではないでしょうか。

人には、ある特定のことを意識し始めると、日々の生活の中でその特定の情報が自然と目に留まりやすくなるカラーバス効果があり、何を意識しているかが重要です。
カラーバス効果に関する記事

1on1などの振り返りや目標設定を行う対話の場では、「何のためにやるのか?」と認知的クラフティングをコーチングすることで、仕事に対する捉え方から変える視座の引き上げから始め、その目的に応じて「例えば、〇〇もできるのではないか?」とタスククラフティング、関係性クラフティングの例を提示することで視野を広げていくことが有効と考えられます。
目的が変わることでカラーバス効果が働き、自然と工夫を生み出すための情報が自発的に集めれ、発想が豊かになっていきます。

▶︎良い行動事例を伝播していく

ハックマンとオルダムの職務特性モデルによると、分業が進みすぎると仕事に一貫して携われず仕事に対する有意義感を見失い、裁量度が低く決められた通りにしかできない仕事だと責任感が芽生えないといったように、人の心理は職務特性によって左右されるとされています。

そのため、仕事の範囲や仕方を工夫した先行事例を賞賛して共有することで、ジョブクラフティングが伝播されていくと考えられます。

組織の掲げる行動指針に沿った行動を賞賛するバリュー表彰では、業績と異なるプロセスにスポットライトが当てられますが、身近な仕事で人を巻き込んだ事例や仕事の仕方を工夫した事例を取り上げることで、「自分もやればできる」と代理体験を通じて自己効力感が高まっていくと、主体的な工夫が生まれやすくなります。
自己効力感に関する記事

そのためには、バリュー表彰に対する解釈の振り返りを行い、「AさんやBさんのように、今の役割で工夫できることがあるのではないか?」と問いかけて、自分ごとに置き換えられるようにコーチングしていくことも有効です。

▶︎自らの意志で仕事に臨める文化をつくる

人は感情の生き物だからこそ、感情の奴隷にはならないように気をつけなければならず、そのために必要なものが意義ではないでしょうか。

どんな仕事であっても意義を自ら見出すことができていれば、踏ん張る理由ができ、自ずとさまざまな工夫が生まれていき、誰かの指示で動く仕事が自らの意志で行っている仕事となることで、面白味を感じることができます。

元GE会長兼CEOのジャック·ウェルチ氏の言葉に下記があります。

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自分の運命は自分で管理しなさい。さもなければ誰か他の人が管理しようとする。
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企業組織で働くことのメリットの一つは、豊富なリソース(ヒト・モノ・カネ・ブランド)を活用できることにあります。
やらされ感で仕事をこなすのではなく、ジョブクラフティングを行うことが、自らのキャリアデザインにも繋がっていくのです。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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