サーベイ2.株式会社ソラコム(147A)

“世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ。”をビジョンに掲げる株式会社ソラコム。
同社は、従来の通信業界がハードウェア中心で新規参入の壁が高かったことに対して、クラウド技術を活用することで、IoTデバイス向けの通信サービスをより安価かつ柔軟に提供し、大企業だけでなく、スタートアップや個人開発者も手軽にIoT通信を利用できる変革を起こしています。
大企業のKDDIと資本関係を結び、シナジーを発揮することでグローバルに進出もしており、さらなる成長が期待されています。

▶︎沿革

・2014年11月に創業。
 └創業者の玉川憲 氏がAWSの日本法人立ち上げエンジニアとしてAWSの成長を目の当たりにする中で、通信を民主化することを目指して通信のソフトウェア変革を志した
・2017年8月にKDDI株式会社が出資し、子会社化
 └未発表だが、譲渡価格は200億円相当の推測されており、規制が多く、新興企業がグローバル展開するには参入障壁が高い通信業界において、KDDIの資本と提携することで、市場のニーズに対して急激にアプローチに成功
・2024年3月26日に東京証券取引所(グロース市場)に上場し、KDDIの持分法適用会社へ移行  
・上場時の時価総額約675.5億円、2025年2月19日時点の時価総額566.6億円

▶︎ビジネスモデル

・IoT向けの通信プラットフォームを展開し、デバイスの通信からデータ管理、可視化までを一貫してサポート
・主幹事業のIoTデバイス向けのSIMカードSORACOM Airを展開していく中で、KDDIのアセットを活用することで、クラウド×グローバル販路×多様な通信方式への対応×セキュリティ×コスト効率で規模経済を発揮できている
・世界182カ国・地域、417の通信キャリアと連携して、収益源が広い

※筆者作成

・「SORACOM 〇〇」のブランドで、データ収集、ダッシュボード作成、データ転送などのサービス開発が多様化
・IoTシステム開発に必要なサービスをワンストップで提供し、顧客は必要な機能を選択して利用できることで、プライシングを顧客に合わせて設定できる
・上場時からリカーリング収益6~7割、インクリメンタル収益3~4割

株式会社ソラコム
2025年3月期第3四半期決算説明資料

・海外売上比率40~50%で、すでに米国・欧州に進出しているが、IoTが急成長している新興国の東南アジアや中南米市場にも展開が見込める
・安定したリカーリング収益の成長に加え、グローバル + 大型案件 + 戦略的アライアンスでさらなる収益向上が見込める

株式会社ソラコム
2025年3月期第3四半期決算説明資料

・プロフェッショナルサービスで、IoT導入プロジェクトに係る技術要素や課題の整理、実行計画の立案、顧客プロジェクトに参画

▶︎組織体制

・KDDIの完全子会社になりながらも、スピード感や技術革新力を損なわないことを目的に独立した経営体制を維持
・社外取締役に早稲田大学大学院 入山章栄 氏やWiL伊佐山元 氏が参画
・専門性を高めるための教育制度と働き方の柔軟性を設計
・各職能を各国のリージョンチームで機動力を重視しながら開発組織を一本化してグローバル対応強化

▶︎財務分析

※筆者作成

・2025年2月13日に2025年3月期の通期経常利益予想を9億1300万円から6億4000万円へと約30%下方修正され、その背景に大型案件の納期遅れや投資有価証券評価損の計上があげられている
・現金および現金同等物は成長企業の目安の12〜18ヶ月分に該当して安全性を維持できている
・上場時にオーバーアロットメントで純資産が増加

※オーバーアロットメント(OA)とは?
・新規株式公開(IPO)や公募増資の際に、需要が多い場合に追加で株式を市場に供給する仕組みのことです。IPO時に需給バランスを調整し、株価を安定させることを目的に検討される。
<メリット>
A.株価の安定化
B.投資家の需要に応えられる
C.企業の資金調達力向上
<デメリット>
A.既存株主の持ち分が希薄化する可能性
B.株価が下落するリスク
C.主幹事証券会社のリスク

・東京証券取引所グロース市場の上場維持基準である25%以上を満たしている

・大株主で事業シナジーが高く、長期保有可能性が高い大手企業数社で過半数を抑えながら、流通株式比率は27.2%を担保

▶︎事業リスク

・上場時の特定の取引先に対する売上比率が、 日本瓦斯株式会社の割合は26.1%で依存が高く、売上構成比のリスク分散が必要
・仮想移動体通信事業者(MVNO)であるため、国内外の移動通信体事業者(MNO)との良好な関係構築が必要
・SIM及びデバイス商品仕入の調達先のリスク分散が必要

▶︎まとめ

・IoT市場は、スマートシティ、自動運転、産業用ロボット、農業DXなど幅広い分野での活用が進んでいるため、さらなる展開が期待されているため、市場の追い風は強い

株式会社ソラコム
2025年3月期第3四半期決算説明資料

・グローバル市場でニーズがあり、面を取りやすい主力プロダクトを有することで、戦略的アライアンスを実行できる組織能力次第で非連続的な事業成長が見込める
・複数事業を展開する上で長期目線の株主構成を維持できている
・生成AIの活用で新規事業も展開中

株式会社ソラコム
2025年3月期第3四半期決算説明資料

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