読書感想:ファイナンス系

1.CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋(徳成旨亮)

三菱UFJ、ニコンのCFOを務められている徳成さんが解説される資本市場の特性や、金庫番思考とCFO思考の違い、アニマルスピリッツが学び深く、ファイナンス戦略の重要度を考えられます

<Point>
・海外の投資家からアニマルスピリッツが日本経済から失われていると見えていることが日本株への投資比重を落とされることにつながっている
・CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき。企業の将来の夢を投資家に語る役割を担い、そのための戦略や資本配分方針を投資家に説明し、共感してもらうミッションを負っている
・資産運用会社は、ピケティの不等式を商売にしている
・資本コストを下げるためには投資家にとってサプライズのない経営を行うことが肝要
・人的資本も人件費というPL上のコストの側面からとらえるのではなく、将来のPLを生むBS上の簿外項目である、広義のBS上の資本である、と考える
・複雑な税務の世界の難題に対応するために、タックスポリシーを明文化する
・健全性確保、成長投資、株主還元から適切な資本配分方針を定め、実行する
・図や文章や対話でステークホルダーにわかりやすく明確に伝えるスキルが重要
・東証プライム市場に上場している企業の平均時価総額4000億円では、欧米投資家の目線では小型株に分類される


2. ファイナンス思考(朝倉 祐介)

ファイナンス思考を持つことで自社ビジネスの見方が変わるとの姿勢の気づきになります

<Point>
・PL脳が内向き志向で縮小均衡型の衰退サイクルをつくっている
・自分たちがどのような資産をもっているのかを自覚し、有効に活用して成果を得る
・財市場、労働市場、資本市場における会社の評価の良し悪しは合致しない
・GAFAに共通するのは、短期的にはPL上の数値にはネガティブな影響が出る意思決定をし、将来の成長に向けて果敢に大きな投資をしていること
・市場の拡大や競争優位性の確保を重視し、極めて大規模な投資を行う
・会社経営において本質的に重要なことは、事業価値を向上することであり、財務諸表上の数値は、あくまでその過程を映し出す指標に過ぎない、PLは未来を語らない
・事業にはそれぞれ特有の時間感覚があり、要するコストやリスクも異なるため、事業の時間軸を考慮せずに目先の収益化を急いでいては、成長する機会を取り逃す
・将来のキャッシュフロー創出の可能性を潰してまで今のPL数値を改善しようとする焼き畑農業的なアプローチは逆効果
・売上至上主義の原因
①マーケットの現状が見えていない
②前年対比の成長が目的化している
③利益をベースにした社内の管理が難しい


3. ゼロからわかるファイナンス思考 働く人と会社の成長戦略(朝倉 祐介)

財務三表の基礎的な理解と共に会社の捉え方を学ぶことができます

<Point>
・会社に資金が集まる→事業投資をするから企業価値が高まる→企業価値が高まるから株価が上がる→ 会社に資金が集まる
・時価総額を構成する株価は会社そのものの事業状況だけでなく、株式市場の需給など、さまざまな外部要因によって日々上下動する
・事業を運営していく過程で取得した資産が、時間の経過と事業環境の変化に伴い、だんだん不要になることもある
・目先の業績を良くするために先行投資を削って将来得られるかもしれないキャッシュを犠牲にしては元の子もない


4.ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (石野雄一)

未来志向で経営を考えるファイナンスの重要度を学ぶことができます

<Point>
・会計とファイナンスとでは対象となる時間軸が違い、会計は過去の業績、ファイナンスは未来の数字を扱う
・資金繰りのためには資本金よりも現預金を重視する
・かつては経常利益が重要とされていたが、本業で儲ける力を示す営業利益の方が注視されている
・投資の前提は本業でそれ以上に儲けられているか
・リスクは危険であり機会
・時間軸が異なるキャッシュを比較する場合は、時間価値の分を調整する
・日産自動車はプロジェクトの実施国によってカントリーリスクなどを考えながら割引率を使い分けている

5.MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣(シバタナオキ)

ビジネスモデルごとに成長要因が異なり、それを分析する力を磨くために決算書を読み解く習慣が大事だと気づきになります

<Point>
・他社の決算書からを読み取くことのできるサービス動向や経営戦略は日常業務の役立つネタにもなりうる
・規模の経済はプラットフォームビジネスにおける場の魅力となり、取引高とテイクレートの差として表れる
・ユーザーが増やし、購買頻度を上げて弾み車に乗せる
・Amazon は1社で日本の大手物流会社並みの物流投資をして強みを磨いている
・テクノロジーを活用して顧客獲得コストを低減できているかで差がついていく
・複数事業でLTVを高める設計ができると競争優位性が増す
・Netflix の初期は自社でコンテンツを作らずであったが、兆円規模の投資で自社コンテンツを作り、急激に拡大し、ローカルコンテンツの製作で多方面でシェアを獲得した
・会社規模が多いくなるほどM&Aで割安が少なくなり、PMIの難易度が上がっていく


6. あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座(田中慎一、保田隆明)

基礎学習とケース分析で分かりやすくファイナンス視点を学ぶことができます

<Point>
・上場企業は、常に投資家にとって魅力的な存在であることが資金調達力と敵対買収の防衛力となるため、企業価値を重視する
・企業価値を最大化することは、将来生み出すキャッシュフローを最大化すること
・収支構造を変革して単年度のP/Lを改善することは比較的容易にできても過去の蓄積であるB/Sを大胆に改善することは難しい
・月次決算は締めるのが早いほど、自社の経営課題を早く明らかにし、課題を克服するための活動に速やかに着手することができる

いいなと思ったら応援しよう!