ケース20. 規範的コミットメント〜規律を築くインナーブランディング〜
▶︎規律はどのように築かれるのか?
挨拶や清掃、勤務態度、コミュニケーションなど基本動作の水準を引き上げるために、職場の規律が唱えられども、実際に変化していくことは難しいのではないでしょうか?
経営の視点:
・規律ある文化を築きたい
・注意喚起しても形骸化しやすい
現場の視点:
・小さなことで注意が飛び交うと気が滅入る
・ルールや注意を忘れてしまいがち
『ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則』には、下記の一節があります。
規律は個人の自由のためにも、機動力の高い自律的な組織をつくるためにも必要です。
今回は、規範的コミットメントという概念に用いて規律を築いていくポイントを考察します。
▶︎規範的コミットメント
※情緖的コミットメントに関する記事
※功利的コミットメントに関する記事
組織の規則を守るべきと個人の組織に対する義務感や責任感を示し、組織が持つブランドに傾倒するほど強まります。
規範的コミットメントが高いと、組織内の倫理的な指針や行動規範を遵守しようとの意欲が高まるため、統率力になります。
それでは、規範的コミットメントを醸成していくためには、何ができるのでしょうか?
▶︎組織独自の規範を明確化
単なる集団や群れと、組織が異なるポイントは、共通の倫理と美意識からなる独自の規範があること、すなわち〇〇らしさが存在することです。
名コンサルタントの波頭亮さんは、マッキンゼーに入社した時に、まず最初に叩き込まれたのは戦略論でも財務分析の手法でもなく、プロフェッショナルとは何かという講義であったと振り返られており、そこではマッキンゼーらしさが醸成されていたと考えられます。
組織内で共通の規範がルールやバリューとして言語化されていると、判断基準が揃い、メンバー間のコミュニケーションが円滑になります。
そして、さまざまな場面における判断の連続が〇〇らしさとなり、そこに順応できたメンバーの規範的コミットメントが高まっていきます。
一方、あるべきの言語化が疎かで、〇〇らしさが薄い組織では、責任感も芽生えず規範的コミットメントも高まりません。
例えば、自由と責任の文化を重視するNETFLIXでは、事業の成長に伴う組織の拡大においても、無駄のないプロセスと規律正しい文化をもつ企業の方が機動力が発揮されて優れた成果を出すとして、最低限のルールの明文化とともに、個々人に組織文化への順応を自己責任として求めています。
チームの共通目的に対する当事者意識を保つためにチーム効力感を醸成することも重要です。
※チーム効力感に関する記事
▶︎コーポレートブランドの一員としての振る舞い
世界70カ国の組織に従業員エンゲージメントのアドバイスを提供しているトレイシー・メイレット氏の著者『エンプロイーエクスペリエンス』では、下記のように一人ひとりのメンバーがコーポレートブランドを築くと説かれています。
自身が組織の顔として社外から見られているとプレッシャーを感じることがあれば、自ずと振る舞いを気をつけるはずです。
振る舞いが未熟であればリスクもありますが、組織内に閉じずに社外に出る機会を設けて、コーポレートブランドを築く一員として振る舞いをリフレクションする機会を設けることが、自分基準から組織基準に引き上がり規範的コミットメントを高めることに繋がります。
その際には、組織の顔としての振る舞いの基準へ引き上げるために、ロールモデルを用意することが必要です。
そのために、どんな組織に所属するのかで人は影響を受けるとのピア効果が重要であり、採用や人員配置から工夫することが規範的コミットメントの醸成に繋がります。
※ピア効果に関する記事
NETFLIXでは、経済条件と両輪で、優れた同僚が揃う職場ならではのやりがいも報酬として訴求し、高い基準を設けています。
▶︎基準は人によって異なって当然
規律は人が他の人を見て無意識に左右されます。
急拡大する成長組織においても、安定期に入っている成熟企業においても、一人ひとりの組織に対する責任感がなければ、規律ある文化を築くことができません。
モラルは元来人によって異なるため、組織としてのあるべきを考えるには、心理的なコミットメントを接続しなければならない。
『ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則』で下記のように職場の環境が重要と述べられています。
選民思想でUPorOUTをしていくことも一つの規律を築く手段となりますが、本来は採用段階で組織と個人の間で接続がなされていることを踏まえると、文化として規範的コミットメントを高めていくことが望ましいのではないでしょうか。
基準は人によって異なって当然。
接続がなく注意ばかりが飛び交うとポジティブな雰囲気もつくれない。
基準を揃えていくために、組織と個人が接続される動きが重要なのです。
※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。 他記事はぜひマガジンからご覧ください!