AMAZONのストーリーとしての競争戦略考察
2023年に売上5,747億ドルを越え、2024年9月6日時点で時価総額1.7兆ドルと、1994年の創業から破竹の勢いで世界中の経済に大きな影響を及ぼすAMAZON。
AMAZONが成長し続ける要因を、楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』を戦略ストーリー図で考察します。
AMAZONのストーリー構成要素
1.DAY1の精神
└ ジェフ・べゾスが繰り返し強調する「アマゾンにとってはいつでも今日が創業日だ」というスタートアップ精神を維持するためのメッセージ
2.顧客第一主義=顧客を定義化
└ アニュアルレポートで顧客を定義
3. 飽くなき顧客の欲求に応えるための事業投資
└ アメリカの貨物運送大手である FedExと UPS以上の物流投資で顧客のスピードに対する欲求に応えるなど、「消費者は決して満足することはない。そして常に商品やサービスをもっと良くしよう」とサービス改善に投資
4.エブリシング・カンパニー
└品揃えをロングテールを形成しカスタマーエクスペリエンスを向上。また、製造業界やヘルスケアなどあらゆる産業に進出。
5.Winner Takes All =規模の経済
└目先の利益よりも規模な経済を優先することで顧客を抱え込み、持続的な利益を獲得
6.徹底的な採用プロセス
└なぜ採用すべきかを議論の末、部門責任者が育成に責任を持つ前提で採用するプロセスを運用
7.Our Leadership Principles
└顧客志向や採用、育成、決断、対話など14項目のリーダーシップの原則を進藤
8.大胆なビジョンx高速PDCA
└大胆なビジョンを掲げた上で実現に向けたPDCAを泥臭く回していく
9.有利なキャッシュ・コンバージョン・サイクル
└ 商品の仕入れ代金を支払う約30日前には商品の代金を受け取るCCCを実現
10.既存事業のジレンマを打破する破壊的イノベーション
└ イノベーションのジレンマを意識して、既存事業とのカニバリゼーションにも躊躇しない破壊的イノベーションを自ら起こす。
11.オープンイノベーションを軸とした経済圏拡大
└アマゾンアレクサなど自社サービスの開発ツールをオープン化することでAMAZON経済圏を拡大
12.質素倹約
└顧客第一主義に投資できるようコスト管理を厳しく。
13.ロープライス戦略
└ 低コスト体質を構築することによって低価格な商品を継続的に提供して、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略を両立。
14.ユーザー接点と購買頻度の確保
└AMAZON PrimeやAMAZON GOなどOMO展開で常にAMAZONが想起される接点を創出
15.ビッグデータxAIによるサービス開発
└ クラウドを筆頭にビッグデータxAIのプラットフォームを世界に提供
Point①顧客第一主義を実現するための事業投資
ジェフ・ベゾスが創業時に紙ナプキンに描いたループ図に実行するように、AMAZONでは顧客の欲求に応え続けるために事業投資を惜しむことなく継続されていることが、持続的な成長の源泉となっています。
「何のために?」の目的が顧客満足度を高めることで確立されていることが、巨額の事業投資を後押し、模倣困難な事業展開スピードを実現していると考えられます。
Point②破壊的イノベーションを恐れない
日本の文化では難しいとも考えられますが、多くの企業が自社の既存事業の雇用や業績を守るためにカリバニゼーションを避けることに対して、AMAZONは他社によって破壊的イノベーションが起きる前に、自社で破壊的イノベーションを起こしています。
ex)書籍販売から始まったECビジネスでKindleに注力するなど
Day1の精神から始まるスタートアップ精神が巨大企業に成長しようとも大事にされていることが、圧倒的な強者の立ち位置を維持する秘訣と考えられます。
Point③ユーザー接点で身近な存在へ
AMAZON PrimeやAWSなど日常的にAMAZONの名に触れることがあり、AMAZON GO、Amazon Alexaでオフラインの場や、Amazon HealthLakeで医療現場、Amazon Monitronで製造現場など、日常に溢れる存在感を増し続けています。
ユーザー接点を抑えることによる優位性の代表的な事例と言えるでしょう。
上記のように戦略ストーリー図でAMAZONの成長要因を紐解いていくと、プラットフォーマーの優位性によって事業投資をしてきたことだけではなく、意思決定や実行力の背景にある思想や人の力が大きいと考察できました。
(情報や仮説の粗さは多分にあると重々承知していますが‥)
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