創作童話『わすれないよ』
クマのまーくんと妹のくーちゃんは仲良しの兄妹です。
今日も仲良く、ふたりでお出かけ。
「おにいちゃん!このパン屋さんに寄ろう!ここのカレーパン、美味しかったよね?」
「そうだったっけ?」
まーくんは、忘れっぽいです。
お店に入ると、素敵なパンがずらりと並んでいます。
「カレーパンをふたつください」
ふたりはお店の外のベンチでカレーパンを頬張りました。
サクサクの衣が口の周りにたくさん付きますが、お構いなしです。
「そうだそうだ、思い出した!」
まーくんはもぐもぐしながら言いました。
「とっても美味しいね」
また別の日、ふたりは池の上の橋を渡っていました。
蓮の花が満開で、アメンボはスイスイと泳いでいます。
「おにいちゃん!ここで冬にスケートをしたよね?」
「そうだったっけ?」
まーくんはまた、思い出せません。
くーちゃんはまーくんの手を取ると、いち、に、いち、に、とスケートのまねっこをしました。
「こうやって、わたしを引っ張ってくれたじゃない」
「そうだそうだ、思い出した!」
ふたりは楽しくなって、手を繋いだまま踊りました。
またある日のこと、ふたりは公園へ出かけました。公園には、シロツメクサがたくさん咲いています。
「おにいちゃん!わたしにお花の冠、作ってくれたよね?」
「そうだったっけ?」
くーちゃんはシロツメクサでせっせと冠を作り、まーくんの頭の上に乗せてあげました。
「そうだそうだ、思い出した!」
「おにいちゃん、王様みたい!」
冬になりました。
もうすぐまーくんの誕生日です。
くーちゃんは毎年、まーくんのためにお母さんとケーキを焼いていました。
くーちゃんはあることを思いつきました。
「今年は、なにか特別なものをあげよう!」
まーくんの誕生日。
家族みんなでご馳走を食べて、歌って踊ってお祝いしました。
「おにいちゃん、これあげる!」
くーちゃんはそう言うと、まーくんの首に赤いマフラーを巻きました。
くーちゃんは、おばあちゃんに教わって、一生懸命マフラーを編んだのです。
まーくんは目をまんまるにして喜びました。
「わぁ、とってもあたたかいよ」
「冬になったら、わたしとたくさん遊んだこと、このマフラーをみて思い出してね」
「うん!わすれないよ!」
おしまい