大学４年の冬。僕は疲れていた。去年の秋から始めた就職活動を、もう１年以上続けている。 受けた会社の数が100を超えてから、数えるのもやめた。地方の三流大学で、サークルにも所属しないで、バイトと、ギリギリ卒業に足りるだけの単位で組んた授業だけをこなしてきた学生生活を呪った。面接でアピールできることなんて、なにひとつない。 歳の瀬が迫ったその日も、僕はスーツを着て、面接を受けた帰りだった。アパートのある最寄り駅への乗り換えで、この街でいちばん大きな駅へ出てきた。年末に実家へ帰
「もう手袋はいらないね」 隣り合って電車を待つ彼が、ふいに呟いた。 ３月末。朝から風もなく晴れていて、陽射しが眩しい。制服の上着から覗く手首から先は、いつも彼がしているグレーの手袋に隠されている。 「そうだね、今日はあったかいね。」 離任式に出席するために、久しぶりに学校を目指して、ふたり並んで駅のホームに立っている。周囲には誰もいない。 この路線の利用者といえば、自分たちのような学生か、街へ買い物に出かけるのに車が使えない高齢者か、だいたいその二択になる。平日の早
『若きウェルテルの悩み』５月３日の昼公演を観劇しての感想です。原作は高橋義孝訳（新潮文庫）を既読です。 主に山口智広さんの演技にからめての感想になります。 配役 ウェルテル 村瀬歩さん ロッテ 豊田萌絵さん アルベルト他 山口智広さん ヴィルヘルム他 井上和彦さん 今作では、山口さんはアルベルトほかいくつもの兼役でのご出演でした。小さな子ども、若い女性から、伯爵まで、広い年代を演じられていました。いつもながら、対話する相手への視線の送り方や、それぞれの人物らしい仕草や表
原作 オスカー・ワイルド 脚本 保科由里子 2023.5.3の公演の観劇レポートです。 ドリアン・グレイ 重松千晴 ヘンリー・ウォットン卿 山口智広 バジル・ホールワード 高橋広樹 シビル、ヴィクトリア 逢田梨香子 ※原作読了後に観劇 友人のバジルが描いた美しい肖像画をひと目見て、そこに描かれた少年に興味を惹かれるハリー。バジルは、彼自身がその美しさの虜となっていることから、絵のモデルとなった人物・ドリアンを、ハリーから隠そうとする。「どうか悪い影響を与えないで欲しい。」
2023.2.4 恵比寿ザ・ガーデンホール 【オープニング】 赤いビロード？の豪奢な椅子が２脚。それぞれテーブルもセット。上手に山口さん、下手に狩野さんが座る。（夜も位置は同じ） 山 なんか対談みたいじゃない！？ （インタビュア風に）芝居を目指した理由はなんですか？あ、芝居じゃない！役者ね 狩 （真剣に答え語ってた）山口さんは？ 山 あ、モテたかったからです 近いお客さんが双眼鏡で見てるのにリアクション。 山 今日は毛穴埋めてもらったから！メイクさんに「清潔
2023.1.24(火) 紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA 箕浦金之助 山口智広 諸戸道雄 神尾晋一郎 明智小五郎・深山木幸吉他 井上和彦 木崎初代・樋口秀代・小林芳雄他 青山なぎさ 序章 （白い土蔵の夢をみる箕浦。夢の中で、土蔵の高い窓から女が助けを求めている。 そして箕浦は客席へ向けて語りかける。この物語は、ある事件を経験したことにより30歳手前で白髪となった箕浦が、自身の体験したことを語るものである。） 探偵事務所を訪れるシーン。憔悴したトーンのセリ
