運転免許が取れない僕
運転席
2週間の免許合宿の末、ついに卒業試験の日を迎えた。
他の教習生2人と同乗し、僕はトップバッターで試験に臨むことになった。
手に汗とハンドルを握り、エンジンをかける。
教習所内を出て、初めの交差点を右折する時、検定員にブレーキを踏まれた。
これは「死」を意味する。
「落ちた。」って確信した。絶望した。
「絶対は絶対にない」という言葉があるらしいが、この時は思った。絶対に落ちた。絶対に!
それからは、心の中で “滝音さすけ” が「ドライビンデッドやん」と吠えていた。本当に頭が真っ白になって運転していた。その白さは多分、顔面にまで侵食していたと思う。気づいたら、目的に到着、運転手交代。
後部座席
後部座席につくと
「卒業検定に落ちると、延泊しなければならない。」という雑念が僕の中で渦巻いていた。
あー昨日シャンプーを豪快に使わなければ良かったな〜とか
パンツ洗わず、あと2日間か生活か〜
使い捨てのタオル捨てなければ良かったな〜
など小さな後悔を何個も数えた。
結果発表
縦列駐車も終わり、結果発表まで時間があったのでGoogleで
「補助ブレーキ踏まれたのに合格 卒検」など結果は変わらないと分かっているが、検索し続けた。こういう時だけ、yahoo知恵袋の根拠のない神話を信じるのは僕だけだろうか…
結果発表は教室で行われた。
集められたのは日本人15人とベトナム人15人。
やけにベトナム人が多かったが、傷心している僕にはどうでも良かった。
結果発表前に、僕と1人のベトナムの方が外に呼び出され不合格を静かに告げられた。隣のクラスで歓声が上がる中、私は日本代表として2日後の再試験の詳細を肩を淡々と聞いた。
あとがき
次の日に控えた、気になる女の子とのデートはキャンセルにしなければならなかった。
夜中にLINEで「地元に帰ってきたら安心したから?発熱しちゃった。明日の予定延期でもいいですか?」って送ろうとした。
でも僕の中では病弱っていうのは男の恥だ。という古い価値観があり、最終的には「ここの教習所気に入ったから、敢えてもう2泊することにしたわ〜」と送信。
「敢えて」という日本語を服用して、この日はすぐ寝た。