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日本語教育とジェンダー

各国から人が集まる日本語学校では、
いくらジェンダー平等が遅れていると言われる日本社会で生きている私でもびっくりするような男女問題が巻き起こる。

例えば私が経験したものだと、女性器の名前を日本語で叫ばれる、女の子と男の子がペアになると冷やかす、「先生は結婚していないから結婚している私より下です」と言われる、などなど、日本でそんなことをすると「この時代に???????」となってしまうその状況から、母国の成長具合を測ることができる。

日本が何年か前に抜け出すことができたフェーズに、まだとどまっている、というか、いまたどりついたという感じである。

せっかくそのフェーズからちょっと抜け出した日本に来たのだから、彼らには違う感性もあるということを教えてあげたいと思いつつ気になっていることをいくつか紹介する。

①主人と奥さん

もう実践している人も少なくないと思うが、家族構成のトピックになるといまだに教科書に出るのが「主人」と「奥さん」。しかも、わりとはやめのレベルで出るので深く話そうとすると学生の日本語能力の乏しさから伝わらないのである。
私がこれを説明するときは、飼い犬と飼い主の話をする。「飼います」は早いレベルで習うので問題ない。

「飼い主」の「主」は、「これをしてください」「あれをしてはいけません」という人です。うちで「これをしてください、あれをしてください。」いいますは主人です。
「奥さん」の「奥」は家の「とてもうしろ」の意味です。家の中で家の仕事をしたり、子どもを育てたりするのが女の人の仕事という意味です。

ここまで言えばなんとなく学生たちも、今あまり使わないほうがいいの意味がわかってくる。その反応は特に女子学生に顕著に現れやすい。

②学生指導

学生指導で気をつけているのは、話題によって教師の性別を変えることである。例えば、健康診断で尿検査があるとき、その説明をする際は男子学生に指導は男性教員が行うほうがいい。特に若い女性が行なってしまうと、その後の授業態度などにもかかわるため、説明させないほうがいい。
また、女子学生に対して、母国の言葉でブラジャーやパンツなどという言葉は残さないことが賢明だ。国の両親などがその言葉を見ると、「このようなことを学校で指示するのか」と反感を買ってしまうかもしれないからだ。

③男子学生


とくにいまだ女子学生が日本にやってくることが少ないような国にあることだが、女子学生に対して冷やかしの言葉のようなものを授業中に発していることがある。例えば、最初の頃は母国での私語が止まないような場面が見受けられ、スルーされてしまいがちだが、女子学生に対してなにかしら母国語を吐き捨てるような場面が見受けられる。
その時の女子学生の反応をよくみて欲しいのだ。もし顔を伏せたり、その後発言しないようなことがあれば、女性の教員に相談して、声をかけてもらうようにしたほうがいい。
もしもそこで男子学生による女子学生へのセクハラととれるような発言があったのなら、男性教員から、特に年上の教員であればあるほどいいが、厳しく指導することが必要である。
母国と同じように、女性の身分が下だという意識を、女子学生にも男子学生にも持たせてはいけない。

このように、驚くほどの男尊女卑的思想に嫌気がさすことはよくある。自分自身、結婚していない時に結婚していると思わせるために指輪を薬指にはめていた時期もあった。

しかしこれは単なるその国の成長具合によるそういうフェーズであり、日本がたまたま今抜け出せそうなところにいるので、「せっかくだからこの異文化理解のチャンスに一緒に教えてあげよう」という姿勢で挑むのが賢明だろう。

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