ブレイキンとビートボックスバトル
パリ五輪についてはいろいろ問題ありで、開会式ですでに呆れていたわたしは、今回の競技中継はほとんど見なかった。でも、ブレイキンは初めて五輪種目になったのと、結構ダンス動画が好きで観ていたのでブレイキンだけはあらかじめ昼寝して、リアルタイムで頑張って観ていた。
ブレイキンの中継については、YouTubeでFLAVAJAPANがずっとリアルタイムで解説をしていて、オーストラリアのユニフォームについてはそこでも結構話題になっていて、チャット欄では「クール宅急便だ」って言われてたし、男子のJattackもクロネコアタックって言われてて結構盛り上がっていたんだよね。
レイガン(RachelGun)は大技は持っていないし、若い子に比べたら素人目にも動きが緩慢で、ブレイキンという感じの動きででは無かったので「ユニークな動きしてる」といわれていたのだけれど、「勝てなかった」という結果では本国から攻撃されてしまったし、ブレイキンのほうからは「ブレイキンの動きじゃないね」という批判が出たのはわかるんだよね。
いやでも、それはどうなのか?
ブレイクダンス自体も、この30年ほどでどんどん変化していってるのだから、別に毛色の違った人がいてもいいじゃない。
ただ、ブレイキンの採点方法にはなんとなく問題があるなと思ってしまった。
それが、ビートボックスの世界大会であるGBB(GrandBeatboxBattle)と共通の問題みたいな感じもあって、ちょっと気になってしまったのだ。
審判は9人いて、「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の要素について、審判それぞれが採点していく。その採点の結果として、ジャッジ9人の票がそれぞれ1点として入っていく。
個々の評価項目があろうが結局は相対評価になるわけだから、審判たちのひとりひとりの中での評価が3-2だろうが5-0だろうが、その相対的な評価の結果で出た票は1になるのだ。こういう採点の仕組みは、実はBeatboxBattleでも同じだ。
そんな仕組みのため、各審判の中での評価が僅差であっても圧倒的であっても9-0で評価が出てしまうということがある。
だから、予選ラウンドの最終戦でHiro10が敗退したとき、会場からは大きなブーイングが出た。
多様性・独創性・音楽性という、なんともジャッジの好みやBackgroundの影響がが出てしまう部分で彼は負けたんだろうな。(多様性って人種とかじゃなくて、技のバリエーションっていう意味だよね。っていうかこのオリンピック「多様性」を連呼しすぎて気持ち悪いw)
技術性・完成度という意味では彼が優れていたことは、素人目にもわかったよ。
ブレイキンの年齢層でいうと、全般的にみて西高東低なのだ。
アジア系は若い子が出て、欧米系は年齢が高かったな。(一部例外あり)
技術側を高く評価すれば、白人側が弱い感じになる。
(ただ、彼らの手足は長いから映えるんだよなーw)
そんな感じで、ブレイキンの採点基準は小柄なアジア系に不利な感じだったと思う。その中で、韓国系カナダ人のPhilWizardの金メダルはアッパレ!
今回の審査項目に、スピード感とか高難度の技をどれくらい組み入れてるかみたいなのを入れると、多分上位はアジア系が多くなったんじゃないかな。同じく、女子でトーナメントに進めなかった米国のLogisticsもバトル感があって、ブレイクダンス的に評価は高いと思う。
なので、単純に彼らの実力を正しく評価して順位を決めるのであれば、フィギュアスケートみたいに個々の技に点数を割り当てて、出来栄えが素晴らしければ加点するという方式をとったほうが公平になるのだと思う。
ただ、そうするとbattleの形式ではなく、Showcaseって形になるんだと思うんだよね。
Battleってどうしても勝ち負けの戦いになってしまうから、対戦する者同士の相対評価になってしまう。
ブレイクダンスってのはバトルからスタートしてきた歴史があるから、Showcaseという仕組が合わないって主張があるっていうのも、ちょっとわかる気がする。
Showcaseは自己表現という意味ではすごくいいけれど、Battleだからこそ勢いや気合で思わぬ結果が出ることもある。
まあ、オリンピックに関して言うと、Battleという形式をとってはいるけど、相対評価のShowcaseBattleという矛盾した形式になっているように思う。
スポーツなんだから、公平な評価をすべきということになると、Showcaseでやるほうがいいだろうし、それはブレイクダンスの歴史を考えると「なんだかなー」なことでもあるので、結論からいうとオリンピックからは撤退して、自分たちの世界観で世界大会をやったほうがいいのかなと思った。
ただ、オリンピック種目になるということでブレイキンがスポーツという意味での市民権を得るのだと思う人たちも居るのだろう。それならそれで、採点についてはもっと考えるべきで、今回のように、観客の評価と結果が乖離してしまうということはこれからも大いに起こり得る。
予選A組の最終バトルでHiro10が2-0で敗れたときに、会場からブーイングが起こったのは、そういうことだろう。わたしも正直にいえば「スポーツ」であるならば、Hiro10のほうが優れていると感じた。
オリンピックのブレイキンをみていて、同じ土俵で戦うってのが正しいのだろうか?と思うBattleはいくつもあった。でも、同じことがBeatboxの大会でも結構ある。
例えばGBB2023のTAG部門の決勝について、RogueWaveとJAIROが戦ったときも、テクニックで勝るRogueWaveが勝ったわけだけれど、わたしにとっては音楽性については、彼らの音楽は狩猟民族の狩り前のダンスみたいに思えて単調でつまらないものだった。
だから「すごいなぁ~」とは思うけれど、何度もあれを聞きたいとは思わなかったし、その後もほとんど聴いていない。それに対してJAIROのほうは、その決勝のパフォーマンスのライブだけでなく、それを収録しなおした動画を世界中で視聴され続けている。
RogueWaveがテクニックで優れているなんて当たり前のことだ。彼らは以前からTAG部門で組んでいるわけだし、ふたりともソロ部門のチャンピオン経験のある実力者なんだから。
けれど、JAIROは2023年のGBBの動画予選で初めて登場して、Wildcardをトップで通過した新人みたいなもの。(まあ、それ以前からコラボして動画はあげていたんだけどね)
実はわたし、ソロバトルがあまり好きではない人間なのだ。
GBBのソロバトルは、音楽性の有無にかかわらずとにかくバチバチなので、見ていて疲れる。もちろんGeneShinozakiみたいな音楽性の高いひともいるけど、まあ、なんというか音はきれいなんだけど、日本人が思うような繊細なところはあまり感じないw
そうねー合唱なんかでも、きれいに繊細にまとめるところもあれば、重戦車みたいなところもあるし、民族性とか音楽性の違いってのはあるだろうし、見る側のBackgroundによっても、評価がわかれるのだろう。
わたしはRogueWaveが音楽的に単調と思ったけれど、Beatboxをやってきた側のひとにとってはJAIROが同じスタイルを続けていると感じるらしい。
それは、BEATをメインに聴いているか、音楽として聴いているかの違いだろうなと思う。
わたしは大会後の某ジャッジ(フランス人)の動画で、長々コメントを書いて、長ーい返信をもらったことがあるんだけれど、結局なんていうか、Battleはこれからも続くんだということで、それは彼らもわかってくれたと言っていたね。
それを読んで、やっぱり音楽性の高いものとBattleは分けるべきだろうなと思った。わたしはもうソロバトルは去年の時点でほとんど見ていないのだ。
もしかすると、Wingとかはピンポイントで見るかも?
まあ、仕方ないよ。だって単純にスポーツだって、格闘技とかは見ないって人もいるでしょう?日本チャンピオンを肩書にYouTubeやってるmomimaru氏は「生の音を聴いて欲しい」っていうけれど、ライブと録音が全然違うのはわたしでもわかる。
腐っても自分が音楽をやっていた人間だから、ライブで音を体で感じるのと、録音で耳から感じる音が別物なのは音楽でも同じだ。
いろいろ聴いていれば、テクニックや音圧だけでも「ああ、この人すごいな~」ってのはわかる。でも、スキルでバチバチやってるそれが好きか嫌いかといったら、格闘嫌いなわたしはあまり好まない。音圧もあまり強いと吐きそう。
音に敏感で、普段の生活の中でもたまに音のない世界に引き篭もりたくなるわたしにとって、BeatboxのSoloBattleは軽く拷問かも知れないw
でも、どっちも否定する必要はないし、どっちも認めれば良いんだと思う。
日本は多分、アカペラの要素が多めに入ったほうが好きだろうと思うし、そういうビートボクサーが多いことで裾野が広がっているように思う。
多分、バチバチのBattle系のBeatboxが苦手なひとも、Jairoからなら入っていけると思う。
この、聞きやすい受け容れられやすいということは、結構重要なことだ。
やる側は「そんなの関係ない」って思う人もいるだろうけれど、それが今後も長く続き、そして多種多様な人に受け容れられていくためには、裾野が広いことは大切。
大会を開くのだってタダじゃ開けない。多くの観客を動員できることや、賛同して協賛してくれるパートナーとなる企業の存在も必要。
GBBも2021年は、勝っても賞品や賞金なんてあって無きが如しだったととある優勝者が発言して騒ぎにはなったけれど、2023年が日本開催になって(2022年は中止だったんだよ)Avexや音響機器メーカー(詳細忘れた)などがスポンサーになって会場の質や賞金が跳ね上がった。(といっても、まだ安いと思うけどね)
2018年のGBBでSHOW-GOとBATACO(どっちも日本人ね)が1/4 Finalであたったときに、後攻のBATACOがSHOW-GOにこう言った。
You wanna Showcase? I like battle.
知らない人が誤解するといけないけど、BATACOという人は、別に特別攻撃的なひとでもないし、日本語でインタビューを受けるときにはすごく穏やかで、Beatboxに関してもバチバチというより、質の高いBEATを打つ人だ。
でも、Battleに臨むときはこういう感じになるんだろう。
(まあ、これだってGrand Beatbox SHOWCASE Battleなので、バタコくんの発言も何いってんの?って言われても仕方ないんだけどw)
この時点では、SHOW-GOはまだ10代だったし、そんな風にマウントとってるBATACOにあまり好感は持てなかった。
で、この後どうなったかといえば、SHOW-GOはその後も2019,2021とSoloのWildcardを通過させた上で、2021年は出場を辞退し、その後はBattleに出ることはなくなった。もうバトルに出ませんと公言もしている。
バトルには出なくても、多数のBeatboxのMVを発表しつづけていて(月1本は出してる感じ?)、今も注目され続けている世界でもトップクラスのbeatboxerだ。
確かに、イベントとしては、Battleは盛り上がる。でもSHOW-GOのようなビートボクサーもしっかりBeatbox界を支えているのだと思う。
そこで、ブレイキンのほうに戻るけれど、YouTubeだけをみても、ブレイクダンスの取り上げ方はかなり多様だ。多様で良いのだけれど、競技とエンタメの部分のどちらもリスペクトしあって、その世界を盛り上げていくのがいいと思うのだ。
ただ、オリンピック種目となるとスポーツだから、その評価の仕方については今後も変遷があるだろう。今はまだ未完成な世界だと思って、今後に期待したいと思う。
追記
写真はうちの猫ですが、かまってーとお腹を出して見せているところです。
彼女はブレイクダンスの動画も結構好きで。でも多分、フィギュアスケートなんかも好きなので、人の形をした小鳥さんだと思ってますw
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