「愛の不時着」「キム秘書はいったい、なぜ?」の中の女たち(すべてネタバレです)⑵
先に同じタイトルの男性編を書いたので、今回は女性についての続編です。前話でも書きましたが、私の独断と偏見による考察(言うのもおこがましい言葉🤦♀️)です。
ユン・セリとキム・ミソ
「愛の不時着」の主人公2人のシーンを見ていて「互いに真剣勝負に挑んでるみたいだな」と感じることが度々あった。2人の気迫が伝わってくる。ドラマのストーリー自体はファンタジーと言われるくらい現実味のないものだけど、そんなドラマに息を吹き込み、感動を与える作品にしたのはこの2人の演技力だと思う。
「演じ切った」と言う言葉がピッタリくる。高い演技力がなかったら、間が抜けたドラマに仕上がっていたに違いない。特に、ユン・セリを演じたソン・イェジンが素晴らしかった。彼女のこの演技があってこそ、我らの「リ・ジョンヒョク」が一層輝いたんだと思う(彼の顔が北と南では別人のように見えたんだけど、そう思うのは私だけかしら?)
たまたま読んだネット記事だが、韓国の芸能記者が彼女について書いていた。
「ソン・イェジンが人々の間を通って、照明の下に立つと、リングに上がったボクサーのように見える」
納得❣️北朝鮮でのユン・セリは、正に戦って生き抜いたと言える。元々能力、人間力の高い人だったと思うが、ここでの体験が彼女の魅力を一層高めたと思う。
それは、リ・ジョンヒョクの存在無くしては語れない。彼の母性愛にも近い愛情を受けて、彼女は自分の中で欠落していた部分を埋めることができた。彼の「慎ましく、優しい気遣い」にどれだけ救われたことだろう。
だがセリは愛を受けるだけの受け身の人ではない。自分の思いをはっきり表現でき、体を張って主体的に生きる人である。
第6話別れのシーン。目にいっぱい涙を溜めて「あなたを何度も思い出すと思う」と告げる勇気に胸打たれる、たとえジョンヒョクから望む言葉が返ってこなくても🥺。
そして、そのあとのセリのかっこいいシーン。意識のないジョンヒョクを乗せた車の中で、「私の大好きな映画はね、マッドマックス怒りのデスロード」と言って車を疾走させ、ジョンヒョクを救う。しびれる〜😆(韓国でもセリは体を張ってジョンヒョクを救った)
だが意識の戻ったジョンヒョクから「なぜ飛行機に乗らなかったのか」と責められる。でも理由を言わない。「あなたを救うために残った」と言えば彼の心に負担を与えてしまう。この気遣いを知ったジョンヒョクは、もう自分の気持ちを抑えられなくなった、のだと思う。
「私も一度くらいあなたを守ってあげたかった」いつも守られるだけの自分に居心地の悪さを感じていたのだろう。(第4話パラグライダーの場面。自分が降りて捕まれば、あなたを捕まえには来ないと言ったものの逆に助けられた、、、。)
セリへの思いを自覚したことで、ジョンヒョクの悲しみも癒えて行ったのではないか。セリのジョンヒョクへの愛は、いつも抑制が効いている。病院キスだって冷静に分析しちゃう。
何よりも、一時的な自分達の関係が、ジョンヒョクの将来の人生を閉ざしてしまうことを心配している。これが大人の女の愛し方なのかな🤔🤔🤔
「キム秘書はいったい、なぜ?」のキム・ミソも強さと優しさを持ったできる女だ。ふっと不思議に思うのは、上司のイ・ヨンジュンが我々がスクリーンで見ている通りの人間だとしたら、9年間も彼に仕えた動機は何だったのだろうかと。
彼への愛ではなさそうだ(彼は自分のタイプではないと言っている) 家の借金❓高待遇❓彼のわがままぶりにも対処でき、仕事が嫌いではなかったから❓(ヨンジュンがどうして「嫌」と言わなかったんだと聞いていたが彼女は答えていない)。
借金を完済して、思い起こしてみれば、自分の時間もなく、恋をすることもない9年だったと気づいたと言うことなのだろうか。で、区切りをつけて自分の人生を生きようと思い至ったのだろうか。
ただヨンジュンという人は、ミソをずっと思っていたわけだから、彼に「わがままな振る舞い」があっても、ミソはどこかで彼の優しさを感じ取っていたのだろう。
「辞める」と言われたヨンジュンは、彼女の存在の大きさに気づく。それまで自分だけで成し遂げてきたと思っていたことが、実は彼女の支えがあったからだと気づく。歩く速さまでも自分に合わせてくれていたことに気づく。
一緒にいる時には気づかなかったけれど、いなくなって初めてその愛情や存在の大きさに気づかされる、ミソという人はそんな人なのだろう。ひたすらヨンジュンに尽くすが、彼女の魅力はいつの間にか彼の心に忍び込み、揺さぶり、心を変えさせてしまっていた。
いや、ヨンジュンが本来持っていた優しさを引き出したと言った方がいい。彼は辛辣な言葉で威嚇して、その優しさを押し隠してきたのだから。
停電した図書館で出口を探すシーンでは、ヨンジュンは間違った方向を主張するが、ミソは抗わずにひとまず彼に従う。結果、本人が誤りに気づき、認めることになる。
強権的人間の操縦術?賢い人だ。彼女はそうやって、横暴とも思えるヨンジュンに伍して来たのだろう。ミソと言う人は、父親が言うように「笑って苦しみに耐える」人なのだろう。ヨンジュンに接する時、心を落ち着かせて笑顔を作ってから臨んでいた。プロ意識👍
4人の母(ジョンヒョク、セリ、ダン、ヨンジュン)
私が一番好きなのがジョンヒョクの母。この人については拙文「リ・ジョンヒョクの母の愛」で書いたので割愛するが、芯の強さがあって細やかな気遣いのできる品位のある人だと思う (でも北朝鮮で、国家の上層部にいる夫に「息子より自分の地位が大切なの」って、妻が言える状況なのかしら?)
セリの母。婚外子の娘を育てることは、どんなにか辛いことだったろう。でもその苦悩を乗り越えたこの方に賛辞を贈りたい。親の子に対する愛情が芽生えるのは(孫に対する愛情も同じだと思う)、その子供によって愛情の種が植え付けられるからだ、と思っている。
この母も無償の愛を与えてくれたセリを捨てきれなかったし、セリのくれた愛を打ち消すことはできなかったのだと思う。だからセリの失踪後、喪失感と後悔の念に何度も涙したのだろう。そしてそんな母はジョンヒョクがセリの大切な人である事にいち早く気づいていた。
ダンの母。わたし的にはあまり好きなタイプではない。映画制作上大物女優だからか出番が多かったのかなと思ってしまう。不必要なシーンが多かったと思う。
ジョンヒョクがダンを送って平壌にくるシーン。彼女のお着替えシーンって必要だったのかと思う。受け狙い的に彼女を使ったとしか思えない。色々なシーンで彼女だけがとっても浮いていた。
役柄について言うと、人は悪くないとは思うが、品のなさが嫌だった。デパートでのママ友との会話、結婚式の日取りを決めた席上での非礼な言動。婚礼品の列挙をしている自分がジョンヒョクの母を不快にしている事に気づけない無神経ぶり。
ジョンヒョクの病室での醜悪な振る舞いと非礼な言動。この時もジョンヒョクの母の感情はそっちのけ。「軍人でない次男を選んだ」とか言えてしまう感覚。自分中心で他者への気配りができない点は、娘のダンにもしっかり受け継がれている。
しかもこの母のものの見方はフェアじゃない。ご都合主義でコロコロ変わるし、弟に常に指摘され修正されていた。ダンのこの叔父さん、物の見方がなかなかフェアな人だと思う。
ヨンジュンの母。この母は、一番一般的な母親像かなっと思う。夫よりちょっと強そうな妻だが、3人の母の中では夫からのストレスが一番なさそうなのがいい。自由に振る舞っていて幸せそうだ。
息子をほめた母親に対して、ヨンジュンは「俺が尊敬する母さんの作品ですからね」と言って父親を不満にさせる。この家の父親は、セリやジョンヒョクの家と違い、強権的な雰囲気がない。両親の過ちを子供に真摯に謝るところも好ましい(ヨンジュンが「理解できる」と言ったことに対して、この母がかけた言葉が素敵だ❣️)
「理解しなくていいの。私たちを責めてちょうだい。つらかったと、一人で寂しかったと言っていいのよ。我慢しないで」
ポン課長
この人とっても好きだ。可哀想なくらいハチャメチャに振る舞っているけど、憎めない、可愛い人だと思う。彼女のお陰でお腹を抱えて笑うことができた。
職場にこんな人がいたらちょっと辛く感じる時もあるかもしれないけど、仲良しになったら頼もしい味方になれそうだ。(そう言う意味では距離を置きたいダンよりずっと好ましい。ダンについては「ソ・ダンと言う女性についての勝手な考察」と言う拙文があるのでここでは取り上げない。)
舎宅のおばさまたち
この人達との触れ合いが北朝鮮でのセリの心をどれだけ和ませたか(ダンにはできない体験だろう) 何よりイケメン、ジョンヒョクのファンクラブ的存在なのが今日の私達ととっても似ている。彼に会う日はみんな着飾ってそわそわして、お料理でもてなす。
セリを探しにダッシュするジョンヒョクに胸をドキドキさせて、自分の旦那より、彼が好きだなんて言っちゃう。最後は、「恩返しと復讐はしっかりやる」セリの作った自画像入りのクリームに涙していたいい人達だった。
おわりに
重苦しい現状はまだまだ続きそうだけど、文章を書くために言葉を探す時間は楽しいものだ。自分のために書いているけど、ちょっとでも誰かとshareするのも楽しそうだ。そんな思いでいます。今度は何を見ようかな?