アンプリファイド3号の表紙について 1

ご覧くださり、まことに有難うございます。

冊子版アンプリファイド3号の表紙について少し詳しく書きます。

冊子版表紙。千葉県を中心に配布中です。

まずは、額装品。
フレームに納められているのは、「ネウマ譜」という羊皮紙に記された古い楽譜です。イタリアで求めました。

楽譜は16世紀頃に、現代の五線譜に変化していったらしいのですが、それ以前、聖歌は『ネウマ=合図、身振り』という記号で記された、このようなものでした。

「音楽を飾ろう」という今回の特集。まさにぴったりのアートピースではないですか?
※西洋音楽のことだけが話題の中心になってしまうのは、些か憚られるのですが…

正直なところ、この楽譜そのものは、何世紀に書かれたものなのかは詳しく分かりません。羊皮紙の状態も良好なので、それほど古いものでは無さそうですが、古の日課をこなす人々に思いを馳せるきっかけとしては十分だと思います。

額装する際に考慮したのは、羊皮紙の楽譜の、物としての魅力をどのように見せるか、ということでした。
機械で裁断したような直線的な輪郭ではなかったり、経年変化で縁が黄変していたり、どこか歪な方が心地良く感じられます。
そのようなことに留意したので、マット台紙に窓を抜いて、絵柄の部分だけを見せるのではなく、羊皮紙全体を鑑賞できるようにしました。

余白の面積は、緊張感が強すぎたり、逆に間延びしてしまわぬように、最も注意した点です。
また、台紙の質感は、羊皮紙よりもおとなしいスムーズな紙としたのも、作品を引き立てるための重要な要素です。

さて、チョイスしたフレームは銀箔に古美を強く加えた仕上げと、画面に向かって傾斜が下がるプロフィール(断面)を持ったデザインです。

金箔を使ったフレームの方が、聖歌にふさわしいといえるでしょう。しかし、ちょっとだけ派手過ぎるかもしれません。そこで考えたのは、古い石造りの壁にも通じる質感です。ネウマ譜が実際に使われたかも知れない場所を暗示させるような、長い時間の経過が読み取れそうなペイントの仕上げは、果たして作品を引き立ててくれたようです。

さて、次回はこの表紙に写っているその他の小物のことを書いてみます。

文・諏訪孝志


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