あでやかに輝く白い月に 泣いているきみの姿 透き通った長い髪とピアスは 夜風にふかれて 車のライトに反射する 夜の街に汚されたぼくらは 赤信号の前で足をとめる きみの冷たい横顔から流れる ひとしずくの涙は まるで雪の結晶みたいに ひどく美しくて感傷的だった 今にも壊れてしまいそうなきみに ぼくはそっと手をつなぐ 信号が青に変わる 温もりを抱きしめながら 一歩一歩と白い線を踏みたおす 今夜、希望と理想は車に轢かれて死んだ あるのは絶望と現実だけ それでも進むし
私は三日月 満月にはなれない いつも欠けている ずっと探しているの 作りものでも嘘でもない ほんとうの美しさを この空白を埋めてくれる ほんとうの温もりを でもどこにもなかった あるのは暗い闇と静寂 沈んでいく私の心は 深い深い真っ暗な海に 落ちて堕ちて陥ちていく 口からあふれる気泡が 青白く光る海月に触れる とても綺麗なお月様 私が探してたものは そこにあったのね もう苦しくないよ このまま眠らせて 夜に沈ませて、、
わたしはあなたのようにはなれない あなたもわたしのようにはなれない でもそれって素敵なことじゃない? みんな同じ人間に見えるのに それぞれ違う心と身体があるんだよ わたしとあなたも似ているけど 本当は違うところがいっぱい あなたはよく自分を傷つけるけど わたしは自分を傷つけない あなたはよく不満をこぼすけど わたしは不満をこぼさない あなたはよく逃げるけど わたしは逃げない あなたはよく泣くけど わたしは泣かない わたしはそんなあなたが大好きで大嫌いだよ わたしとあなた
窓辺からさす あたたかな日差し 翠緑に色どる木の葉が 嬉しそうにほほえむ 規則通りにまわる世界で あいまいに あやふやに 育っていく追憶の花へ 愛しさのカケラをひとつ 涙に溶かして注ぐ 黄色の花弁からは やさしくてあたたかい 思い出の香りがする 戻れない記憶はいつだって 美しくてきれいなままだ 慈愛にあふれている ぼくは実った果実を煮詰め いちごジャムを作るみたいに 嘘と欺瞞をとりのぞく 偽りのない愛さえあれば この枯れた心には充分だから いつかこの心にも 百合の
おぼろげな満月が夜空に浮かぶ 青白いワンピースを着たきみは 透明なガラスのように 儚くてもろい体を 暗い海に漂わせ 月光を泳ぐ ゆらゆらと ゆるゆると 海面に浮かぶきみの姿を 白い浜辺からみつめる 蕾をとじたツキミソウの花が ざらめの星に照らされ ぬくもりを咲かす かぼそい痛みさえ 夜の魔法に溶けて あるがままを映し出す きみは笑っているようで 本当は泣いている 奥底でくすぶる 孤独に震えながら まだ知らない光を求めている ぼくはただ きみの心にふれたい きみの痛み
市営図書館にこもる午前10時 無数の言の葉が風にふかれて舞う 物語が色あざやかに浮かぶ ぼくは本の表紙をそっと撫でて ページをぱらぱらとめくる 紙の肌触りが好きだ それまでの軌跡が一つひとつ シミとなり 跡になり 糧となる 物語は本の内側にだけでなく 外側にもある どんな人がこの本を取ったのだろう どんな想いを込めて書かれたのだろう それぞれの記憶が1ページずつ 言の葉の渦に飲まれて 泡のようにはじける 架空の空とストーリー 憂鬱な心も今はどうでもいい きみの線をなぞる