見出し画像

ビフォーアフターシリーズ#004 ROSET Calin張り替え

パッと見た感じはシンプルで生地でキレイに包まれている椅子だなという印象です。

ですが椅子の裏までよ〜く観察してみると、「なるほど〜」と感心しながら「う〜ん」と悩んでいる自分がいました。

出来そうだけど、難しそう・・・。

でもやってみないと分かんないな。

こんな感じで悩みながらも張り替えはスタートしました。

張り替え事例

before

施工前の状態

張り替え前の状態は、生地の汚れはあるものの破れたりへたったりはしておらず使用する分には特に問題はありませんでした。

実はこの張り替えをご依頼いただいたお客さんは、以前にも別の椅子の張り替えをさせていただいた方なんです。

そのときに張り替えた椅子に合わせて、今回の椅子も張り替えをしてほしいというのが今回のご依頼内容です。

生地はお客さん自身が選んで用意をしてくれました。

張り替える生地は、minä perhonen dop tambourine(ミナペルホネン ドップ タンバリン)。

両面モールスキン(モグラの毛皮のような感触をもち、片面を起毛した厚手のコットン織物) のダブルフェイスによる生地“dop” は、使い込むうちに表面の糸が擦り減ることで裏面の色が現れてくる性質を持ち、劣化するというのではなく時間をかけて変化し永く愛用していただけるよう考えられデザインされています。

“dop” はイタリア語の“doppio” =「ダブル」に由来します。裏表が異なる表情を持つダブルフェイスによる生地は、どちらも表としてとらえることができます。

interior essence HPより

この生地で張り替えてほしいというご依頼、実は結構ありまして。

これまでもいくつか生地の持ち込みで張り替えをご依頼いただきますが、ほとんどがこのミナペルホネンのドップタンバリンという生地なんです。

確かにシンプルなデザインで色味も可愛く、生地感もしっかりしているので人気があるのも頷けます。

素敵な生地なんですが、扱う側からするとこれまた「う〜ん」と考えなければいけない事態が発生します。

パターン柄が入っているという事です。

こういった柄が入っていると、縦や横にまっすぐなっていないとものすごく違和感を感じます。

ストライプ柄やボーダー柄なども中途半端に傾いていたり歪んでると気持ち悪くないですか?

なので中心がちゃんと取れていて、柄が上から下に違和感なく流れるように仕上げなければいけません。

ここが「う〜ん」となってしまうポイントなんです。

元のカバーを元にしてそれぞれのパーツの型を作るんですが、見える位置のパーツは柄の向き、縦横が揃うように型を写していきます。

椅子の裏側はオープンファスナーを上手く使って脚の部分を避けてカバーリングされるような作りになっています。

オープンファスナーとは、アウターのファスナーのように完全に開いたり閉じたりができるファスナーのことです。

いす張り工房AMANO

この仕様で作らないとキレイに収まりません。
(よく考えられている。)

なので縫い合わせる場所、順番などを意識して縫い合わせていく必要があります。

なんとか全てのパーツを縫い合わせて本体に被せたものがこちらになります。

after

施工後の状態

なんとか上手く柄を揃えることが出来たんじゃないかと思います。

背と座の境目でボタン締めをしてるので、キュッと絞られているような仕上がりになってます。

2脚あったので2脚の柄をそろえる必要もありました。

施工後の背面の仕上がり

背裏はボタンで閉じられる作りでしたので、ここも柄が揃うように。

ボタンで閉じるという方法は、遊びが大きいのでしっかり止めたい位置で止まってくれないのが悩ましかったです。

色味も形も含めて優しくて柔らかな雰囲気になったかと思います。

カバーリングの考え方や縫製の仕方、かなり勉強になりました。

悩んだ分、仕上がった時とお客さんに喜んでもらえた時の嬉しさは増しますね。

今回は少し変わった椅子の張り替え事例を紹介させてもらいました。

今回の張り替えの様子は動画にて公開しています。
もし興味があれば見てみてください。

最後までご覧いただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!