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With the Beatles / The Beatles

引き続き2024年末のビートルズレコードの棚卸レポート
今回は2ndアルバム「With the Beatles」
 1stアルバムが短時間で作られたのに対し、このアルバムはある程度時間をかけたものになっています。レコーディング後、アセテート盤のカッティングにおいてGマーティンたちスタッフは、彼らの音楽が「どう聴かれるか?」に神経を使っていたようです。マトリクスが7N(モノラル盤)まであることから、短期間でカッティングが繰り返されて音造りがなされたようですね。例によって、マト1は「ラウドカット」として有名です。レコード溝が深く掘られていたようで、音がデカいです。マト2がなくて、マト3からマト7まで短期間でカッティングされました。マトが切られるたびにプレスもされて市場で売られましたから、1,3~7は現在でもY!やe-bayで出回っています。

 一般的にこのレコードの見分け方は簡単です。レーベルB面ラスト曲の「MONEY」の出版社のクレジットが"Jobete Mus. NCB"になっているのが正真正銘の1stプレスです。 マトリクスの枝番は-1N。同じ-1Nでも、2ndプレス以降はクレジットが"Dominion Belinda"になっています。

 ジャケットの有名な写真についてですが、印刷でいえば1Nは、ジョンの顔半分がベッタリと黒塗り状態です。以降~7Nのほうが、ジョンの顔半分がきれいなグラデーションになっていて、表情が判別できます。ある意味、音質的にもジャケット的にも7Nのほうが完成形と言われる所以だと思います。ジャケットについては、いろいろとツッコミどころが多いです。

【所有レコード】
PMC - 1206 Mono
Ⅰ. XEX - 447 -1N / XEX - 448 -1N  ①1-LM ②1-GT  ”Jobete”
Ⅱ. XEX - 447 -7N / XEX - 448 -7N  ①3 ②2 7   ”Decca Press”

PCS - 3045 Stereo
Ⅰ.YEX - 110 -2 / YEX - 111 -2  ①3-M ②1-M "Y&B"
Ⅱ.YEX- 110 -2 / YEX - 111 -3   ①4-GDD ②1-R ”2box” Gramophone Rim

モノラル盤レポート:
 所有しているマト1N盤は、いまさら説明不要の「Jobete」版です。天下御免の1stプレスであり、マザーは両面1で、スタンパも2ケタと若い。音質もすばらしくノイズもほとんど気にならないレベルです。さすがラウドカット本家で、音のレベル感が大きいです。

 マト7Nのほう一般の盤とはちがうレアもの。通称「デッカ委託プレス」。レーベル上にひとまわり大きな輪が特徴。デッカ社は、言わずと知れたデビュー前のビートルズを蹴った有名なレコード会社です。本当なら、恥ずかしくてビートルズやエプスタインの前に顔を出せる義理ではないのですが、さすが商売人の鑑。売れるとなったら恩讐も何のその。売れるものは売ってしまえ、お困りならこちらでもプレスしますよ、とばかりにEMIに擦り寄った形でプレスの委託を受けました。EMIとしても、自社のヘイズ工場ではあまりの急激な注文枚数にプレスの破綻をきたしていたようで(なんせ、前作PPMとこのレコードで1年間売り上げ連続1位だった)。プレスできて市場にだせるなら渡りに船とばかりなので、あっさりと委託した次第。ほ他に「パイレコード」にも委託をしたらしいです。
 デッカ社のレーベルには同社特徴的な大きなリングがあります。わたしの所有盤はマザーコードからPyeプレスではないです。デッカプレスにはスタンパーコードはありません。当時爆売れしたレコードのために、連日残業のEMIヘイズ工場のスタッフがヘトヘトになっているのにくらべ、委託されたデッカ社は余裕があったらしいです。だからデッカプレスは工場の工員さんも丁寧にプレスしたので、音にも余裕がある、とのガイド本等の指摘もあります(知らんけど(笑))。

 各種ネットでも意見があるとおり、デッカ社の7Nはラウドカットに比べて聴きやすいです。音がハリーさんが何度も切りなおしたカッティングでの最終形です。悪かろうはずがない、と思います(3N~6Nは、カッティングの溝が浅かったり、音質がラジオ向きであったりとか結構実験的だったようです)。

 (PCS-3045)のステレオ盤レポート
Large STEREOロゴ  
Y&Bレーベル "Dominion" "YOU REALLY GOTTA ~
" ジャケットタイプ"YOU REALY GOTTA~"

 Y&Bのステレオ盤のマトリクスは2が最初になります(1は無し)。所有盤は両面が一桁スタンパー、それも2面は1番目のマザーで4番目のスタンパーになります。ジャケットには表面に大きな折り皺があります。再生すると1面がやたらとノイジーです。最初チリパチノイズ程度くらいかと感じていたが、音が濁ってきました。ボーカルが割れています。ヤバイヤバイ。なんとか最後まで、針飛びせずに完走しましたが結構綿埃がひどく溜まっています。2面の1Mはさすがにいい音してましたが、A面のショックでなんとなく集中力が切れたみたいで、素直に耳に入ってきませんでした。あとでレコード針をみたら、たんまりとホコリがついていましたし。盤に悪いと聞くので、あんまりスプレーとかしてないし、洗浄なんか全然していません。やはり、盤は磨かないといけないみたいですね。いろいろとネットでレコードの洗浄方法を調べましたが、相当手間ひまかかりそうです。

 それでも1曲目のジョージのボーカル&ギターは素晴らしかった。左右泣き別れミックスではあるが、G・マーティンの思惑通り、ボーカルが埋もれない、おそらくラジオからだとうまく聞こえるのでしょうね。

2BOXのほうは、後期プレスで、Bsideマトも「‐3」になったがマザースタンパが「1R」なので、リカットされて2番目のものになります。あまり聴きこまれていないのか、こちらもノイズがほとんど気になりません。歌と演奏の「泣き別れステレオ」ですが、うちの左右のスピーカーは間隔が狭いので、音が微妙に混ざり合っててうまい具合にモノラルのように聴こえます。一つの塊でありながら、ボーカル部分とバックの演奏がきれいに聴き分けられるので、G・マーティンはこういう効果を狙ってたみたいなのでは、と思います。所謂AMラジオで聴けば、こんな感じに聴こえるのかと。

【ジャケットの変遷ステレオ盤編】
ジャケットとレーベルにいろいろとツッコミどころがあります。ジャケット裏面の曲名印刷にミスプリントがあります。
"YOU REALLY GOT A HOLD ON ME"のミスプリント変遷 

ジャケット 組み合わせ

1963年 Ⅰ:ラージロゴ / "GOTTA"  Ⅱ:ラージロゴ / "GOT A"

1964年 Ⅲ:ミドルロゴ / "GOTTA"   Ⅳ:ミドルロゴ / "GOT A"  
    Ⅴ:ラージロゴ / "GOT A"   Ⅵ:ラージロゴ / "GOT A" 

1965年 Ⅶ:スモールロゴ / "GOTTA"

1969年  Ⅷ:ロゴ無し / "GOTTA"    Ⅸ:ロゴ無し / "GOT A"

1970年 Ⅹ:ラージロゴ / "GOT A"    (以降変化なし)

レーベル組み合わせ
例:(3曲目 - 社名 / 7曲目)スペル間違いがあります。
正:GOT A  誤:GOTTA
正:Dominion 誤:Domion

Ⅰ:(GOTTA - Dominion / Jobete   
Ⅱ:(GOTTA - Domion / Jobete)
Ⅲ:(GOT A - Domion / Dominion)   
Ⅳ:(GOT A - Dominion / Dominion)

こういう組み合わせがありますので、お手持ちの盤があれば、一度ご確認されるのも一興かと。ちなみに、「Ⅳ」の組み合わせがスペル的に正解です。
ジャケットにしても、レーベルにしても日本の会社であれば、このようなミスは検品の段階でチェックできるのでしょうが、EMIでは当時はとにかく「プレス!プレス!プレス!納品!納品!納品!」優先だったので、多少のスペル間違いくらい、どーでもええわい!だったのでしょうね。