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キラキラに見える「夢」との乖離。「僕の夢は人を殺すこと」

【過去振り返りインタビュー】

川副奈緒美さんは、母親世代の女性を中心に様々な人と向かい合うプロコーチです。
 そんな彼女にコーチングに出会うまでの過去を振り返って貰いました。
「全てのはじまり」は、高校時代に見た一本のドキュメンタリーだと言います。

「僕の夢は人を殺すこと」

――:なおみさんが今コーチングをしていて、原体験だと思う経験はありますか?

なおみ:高校2年生の時に見たテレビのドキュメンタリーが、私にとってすごく衝撃的で。
 「世界がもし100人の村だったら」という絵本を元にしたドキュメンタリーで、その回のテーマは「世界の子どもたちに自分の夢を描いてもらう」だったの。
忘れられなかったのが、内戦がおこっていた南アフリカの少年兵。彼は「僕の夢は人を殺すこと」と言ったの。大きなライフル銃と、自分が書いた真っ赤な血の色で塗られた絵を持っていた。「僕は、目の前で両親を殺された。殺さないと、自分が殺される。だから、人を殺すのが僕の夢だ」。
その子の夢が、あまりにも衝撃的で。私は洗濯物を畳みながら、そのテレビを見ていたんだけど、気が付いたら号泣していた。

――そんなに衝撃的だった。

なみみ:自分の「当たり前」を凌駕してたんだと思う。キラキラした響きの「夢」と、倫理的に許されない「人殺し」という二つの言葉が、自分の脳内でまったく繋がらない。でも、彼は本気でそれを言っている。歴史上の話ではなく、海の向こうに今、こんな夢を持っている同世代の人が存在している。
「どういうこと?」って思った。悲しさを超えて、頭がバグっちゃう感じ。それほどの衝撃だった。

――:その後の高校生活にも影響があったんですか?

なおみ: そのドキュメンタリーを見て、「自分にも何か出来ることはないのか?」とすぐ調べ始めた。でも調べるほど、「現状を知らないと、何が出来るかすらわからない」ってことが分かった。
元々、数学が得意だったから商学部にでも行こうかな、ってなんとなく進路を考えていたけど、世界のことを知らないといけない。と思ったから、高校3年生で進路を文系に変えて、国際系の学部を目指しました。

――:文転して、受験は大変だったんですか?

なおみ:本命だった大学のAO入試は、途中までは順調に進んだの。
でも、その最終面接で面接官の先生に言われことは今でも忘れない。
ドキュメンタリーを見て、その南アフリカの子の問題を考えたい、って話をしたら、こう返された。
 「あなたはそういうけれど、日本の問題はどうするの?」って。
 この時、何も答えられなかった。自分の答えを持っていなかった
 面接から帰る時にも、その先生の質問が頭の中でぐるぐるまわって。電車を乗り間違えたり考えているうちに、乗り過ごしたりした。そのぐらいショックな体験だった。

――:なぜ、そんなにショックを受けたんだろう?

なおみ:自分の考えが、浅はかだったことに気づいたから。
 日本の問題と、海外の問題の、どちらがより重要ということはない。だから、この質問に明確な答えはない。面接のときでも、それは分かっていた。
でも、言葉のごとく「日本の問題は?」を考えてすらいなかった。日本に生まれて日本に住んでいるいるのに、そういう見方をしてこなかった。自分なりの考えを持っていない、そんな自分に絶望したんだよね。
結局、その大学は落とされて。なんとか受かった大学の国際文学部に行くことになった。

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