記事一覧
この世には地雷というものが存在する(BFC4落選作)
この世には地雷というものが存在することを知ったのは、公共系機関に勤める藤野が勤務八年目、J課に異動になった年だった。
「Sさん、この助成金の計算、たぶん違うと思うよ」と軽くSに言ったことがきっかけだった。広くはないフロアに机が島状に並び、二つ向こうの席の彼女に声を掛けた。前年から主任になった藤野としては、注意も職務の内なものの、呼びつけるのは威圧的な気がして、柔らかい雰囲気で言ったつもりだったが
小説変態化光線を撃滅せよ!
ウィーン、ウィーン。平成な警告音が書店内に鳴り響いた。
「探知システム反応、ゴールド。小説変態化光線、来ます!」「襲来予測地点は?」「〇〇市立図書館です」「よし、出撃だ」
そう指示を出したのは、昨年、小説変態化光線に蹂躙された大型書店の店長だった。そう呼ばれる謎の光線を浴びた書籍は、その小説をもとに異形の姿に変容し、見るも無残で醜悪な姿に実体化する。彼の店の本は『ゲソ戦記』『炊いたんの幼女』『
果樹園は海底にたゆたう
(お願い:小さい2が表示できないため二酸化炭素をCO2と表示しています)
市議会から戻った母さんが、そのまま僕の部屋に入って来た。
「侑司、そろそろ、あなたもチョウチン鮫狩りに行く?」
母さんに突然そう言われて咄嗟に意味がわからなかった。しばらくしてその意味に気付くと、あまりに嬉しさに飛び上がりそうになった。
「本当?」
部屋は、天井に植え込まれている発光苔だけの灯りだけで薄暗く、母さんの
屋敷ヤドカリの島と、届いたあるいは届かなかった便りについて
屋敷ヤドカリのことは汐楼本島の民なら知らない者はいない。これは小さな木製の舟しかなかった百年も前の話。
本島の北には紅帆島、紫帆島、黒凪島という三つの島があり、今でこそ大型船で結ばれているが、当時は速く急な潮流で遮られ舟で行き交うことはできなかった。あるひとつの方法を除いては。
*
汐楼本島南側の穏やかな海に面して真っ白な砂浜が
銀河鉄道の真夜中(ブンゲイファイトクラブ3落選作)
「青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。」
僕は『銀河鉄道の夜』を枕元に置くと、ぼんやりと天井を見上げた。今日、学校で課題図書として感想文の宿題が出た。期限は金曜日までなので、あと三日あるけど家に帰ってきてから一気に読んだ。表紙は少年の姿を描いたきれいなアニメの絵で、題名も銀河鉄道というぐらいだから、銀河を
脅威!小説変態化光線
ビー、ビー、ビー。昭和な警告音が書店内に鳴り響いた。
「げっ! 早期警戒システムに反応あり。小説変態化光線警報です!」
「まさか、この三十年、何もなかったのに」
「間違いありません。まもなくこの書店に変態化光線が降り注いできます」
「気をつけろ。醜悪に変態した本の内容が出現してくるぞ。まずお客様を避難させるんだ」
この事態に対処できるよう、毎年秘密訓練を受けてきた店長がてきぱきと指示を下してい
朱く、赤く、紅く、そして
「準決勝戦のテーマを発表します。テーマは合戦」
観覧システムに接続された観客から「おおっ」と心のどよめきが上がった。
「なんとかなるな」
仮想空間の漆黒の闇の中に浮んだ、みさき先輩が頷くのが見えた。本当なら闇の中の動作は見えないはずだが、見えたかのように認識されてしまうのが表象VRの特徴。三組のペアで戦うルール。僕は残る対戦相手を見た。
先鋭科技高校科学部を始めとする六組一二人。三年と二年の
「サンゲツ機」 (ブンゲイファイトクラブ2落選作)
文部科学省は大学入試センター試験の改革を進め、新テストとして思考力、論理力を問う記述式問題の導入を決定した。しかし障害となったのが五〇万人もの受験者の記述回答の採点をどうするかということであった。そこで文科省は採点用AIの開発を開始した。
民間のエンジニアであった私は、全く縁のない大学入試センターからの突然の電話に戸惑った。すぐにセンターに来てほしいと言う。訳のわからないまま到着すると、