カモメと僕と海 【詩】
かもめの声が海のある街に来たことを知らせる
愛想のない駅員さんに
あえてにっこりと微笑みかけ
僕は港へ向かう
港には沈鬱な空気が漂い、
鮮やかな海をしらけさせている
途端に雨が降ってきて僕は漁業組合の前の屋根の下で一時をしのいだ
向こうからやってきた猫は僕を一瞥して方向転換して視界から消えていった
人間もおんなじように僕をいないものとするので
僕はこの港との相性を考えて
日はすっかり照ってきていたが、港から立ち去ることにした
駅へ向かう途中、船着場を見つけた
僕はどこへ行くかもわからない船へ乗り込んだ
船は1羽のかもめと並走してどこかの島を目指している
かもめは横目で何か食べ物を要求する
途端に風が強く吹いて、かもめの体はガクとぐらついた
白い羽毛に覆われたほの温かいお腹を下からそっと支えてやると
かもめの瞬きの数は減り、安堵したかのようだった
向こうのほうで漁船の網に掛かった魚たちがぴちぴち跳ね上がる
目に留めたかもめは海へ鋭く飛び込んでいった
船は黙々と進んでいく
かもめが漁り、水や魚が跳ね上がる音はもうすでに聞こえなくなっていた
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