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【日記小説】 見えない雪

2022/12/15

11:02、ホテルを出て、ホテルでもらったクーポンを消費するために四条駅のすぐそばにある大垣書店本店に入る。
といっても何か欲しい本があるわけでもなく、ただ本屋の中を歩き回る。
これといった本がなく、こうしている時間がもったいないと我に返り、本屋をあとに。

11:27、四条通りを祇園方面に向かって歩き、ある横断歩道で立ち止まると、かすかに雪が降っていることに気がついた。
本当に見えるかどうかといったくらいの雪で、信号を待つ人は誰も気づいていない。
気づいていてあえて知らない振りをするということはないだろう、まだ今年雪は降っていないのだから。
自分だけ雪の存在に気づいているという状況に耐えられなくなって、空を異常なほど見つめ、周囲の人たちの注意を空に持って行かせようとする。
そんな僕の様子を眉をひそめて凝視するサラリーマンがいた。
ただ僕の奇怪な様子を見ているだけで、空には目をうつさない。
今度はサラリーマンの目を見て訴えようとすると、目が重なる寸前でサラリーマンは目をそらした。
僕も雪を見るのはもう止めた。
こんなにつまらない初雪は初めてだ。誰も悪くない、強いて言うなら、初雪なんかで一喜一憂するいい歳した自分が愚かなのだ。
信号が青に変わり、それぞれが横断歩道へ足を踏み出す。
僕の目の前にひらひらと肉眼で見えるのがやっとというほどの白い欠片がダウンの胸あたりに当たり、すぐに吸収される。
何も感じないはずがではあるが、凍てつくような冷たさをダウン越しに感じた。


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