ジレンマ抱えて飛び出した 【詩】
ジレンマ抱えて飛び出した
雨と薄暗い春の気配
時間が虚しげに前を歩いている
汚れた白のニューバランスのスニーカー
安心のためにいつまでも同じものを履き続けていた
君に会う時は汚れを念入りに取り去っていたけれど
もうその必要はすっかりなくなって
汚れすさんだ足元にも目がいかなくなった
道路工事の無機質な鉄を叩く音が頭蓋骨にジリジリ響く
白いヘルメットにオレンジの蛍光ジャンパーを着た
交通整理のおじさんが僕を特別ルートに案内する
会釈して、声にならないほどの声で「すみません」と言う
よく考えてみれば自分が謝ることないのだけれど
僕はそうしてまた自分を安心させる
いつしかジレンマは僕の主導権を奪い
僕はもう左右に揺さぶらることすらもなく
ただ魂が抜けたように家の近くをさまよっていた
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