歌『半袖』 ~光と影
その人を見た 子供と遊ぶ笑い声が 庭にこぼれていた
初夏の匂いが 駅に降り立ち 木立揺れる長い坂道
まぶしい陽を浴びて 細く美しい腕が 白い半袖からのぞいていた
清らかな空 苦しくて…苦しくて… たおれそうになる
(今井美樹 ”半袖”)
初めてこの曲を聴いたとき、歌詞から「光と影」という言葉が思い浮かんだ。
お天気の良い夏のはじめに、電車に揺られ、慣れぬ駅に降り、木々の間からちらちらと漏れる光を浴びながら道を進む。もしかしたら彼女は日傘を指していたのかもしれない。そうして目指した家の庭では、燦々と降り注ぐ太陽の光を全身に浴びながら、白い半袖から美しい腕を除かせた女性を見つける。
陰に留まる彼女と、陽を浴びて白い洋服を身にまとった女性。この歌の後半で、陰の彼女は自分を「愛してはもらえない」存在と言う。逆をとれば、光の女性は「愛してもらえる」存在であるということになる。
2人の関係性が直接的な言葉で表現されることはないけれど、「陽」「美しい」「白い」「清らかな」といった表現で光が描き出され、だからこそ影が引き立つ詩の美しさにとても惹かれる。
(表紙画像出典:https://www.pakutaso.com/20131143332post-3544.html)