映画『Before Sunrise』 ~その人独自の何か
"You know I believe if there's any kind of god it wouldn't be in any of us, not you or me. But just this little space in between. If there's any kind of magic in this world, it must be in the attempt of understanding someone, sharing something. I know it's almost impossible to succeed but who cares, really. The answer must be in the attempt."
「もし神がいるとしたら、人と人のあいだに。この世に魔法があるとしたら、それは人が理解し合おうとする力のこと。たとえうまくいかなくても、何かしら得るものがあるわ」
(Richard Linklater ”Before Sunrise”)
過激な効果音も、ムーディな挿入歌もない、ひたすら主人公2人が語り合う、とても静かな映画。スパイスは映し出されるウィーンの綺麗な街並みと言ったところかもしれない。
アメリカへ発つためにウィーンの空港へ向かうジェシーJesseと、パリへ帰るセリーヌCelineは、ブタペスト行きの電車内で会い(なんて素敵な出会い!)、車内のレストランで小話をして(ヨーロッパの街並みを移す車窓と揺れるテーブルに置かれたドリンクを想像してほしい)、「もっと話がしたい」とウィーンの街へセリーヌを誘い出すジェシー。こうして二人は、一晩中ウィーンを歩き回り、お互いのことを話し出す。
その話題のテーマたるや、文化や芸術、哲学、精神、男と女、歴史、思い出などなど。思いつくままに、(場を盛り上げようとしたり、相手に合わせたりなどせず)あるがままに、言葉を発していた。
その、お互いが思っていることを率直な言葉で相手に伝えようとする姿勢に、人と出会い、知り合うというのはこういうことなのだ。そして誰かに自分という存在を伝えたい、知ってほしいという欲求が人にはあるのだと感じさせられた。
人は生まれながらに持っているものに加えて、誕生から今まで何に触れてきて、それをどういう風に捉えてきたのか、そこにその人オリジナルの何かが潜んでいるように思う。例えば同じ映画を見ても、同じ音楽を聴いても、それに対する感想や喚起される情景が人によって異なるように。
そのオリジナルの何かを誰かに分かってもらいたい。だから人は友達や恋人や家族や、共にある人を求めるのだと思う。