夢めも🗒️復讐のファンタジー

これはウツの波がざぷんと大きく全身を飲み込んでいるときに、服薬し忘れ、さらにその状態で寝る直前に『当事者は嘘をつく』小松原織香／筑摩書房 を2章ほど読んで、それがダイレクトに夢に反映されてしまった日の記録（憶）です。性暴力被害やトラウマについての記述が含まれていますので閲覧にはご注意ください。読み進めようかなという方はスクロールダウンしてください。

筑摩書房 当事者は嘘をつく / 小松原 織香 著

---

「夢のめも、の、メモ」に取り上げなかったけれど、とくに心身の状態がよくないときには、たいてい小中学校の頃の記憶がぐちゃぐちゃに混ざった暴力的な夢を見る。中学校に通っていたのは00〜10年代だったけれど、割れたまま修繕されない窓ガラスがたくさんの、教室やお手洗いではアルコールやタバコのニオイがするような、「危ないから」という理由で理科・技術・家庭科の移動教室を禁止されるような、そんな学校だった。ひたすらに学年上位を取り内申点を荒稼ぎし、ひっそり9年間をやり過ごした。思い出される記憶はほとんどなくて、深夜のテレビみたいに黒く吸い込まれるような、あるいは原色がちらつくような映像になるばかり。自分がどのように振る舞っていたかはほんとうに全く思い出せなくて、目の前で繰り返される凄惨な暴力や暴言はときたま思い出す。教師の目の前で威圧するために素手で窓ガラスを割る同級生だったり、そのあっけなく割れる窓ガラスだったり。引き戸であるはずの教室の後ろのドアが蹴り倒されて倒れるさまであったり。先生たちは、どんどん辞めてどんどん入れ替わっていった。怒った顔、困り果てた諦めの顔、思い出そうとしてもそんな顔ばかり。もしくはハイカーストの生徒たちにやたらと慕われて親密な関係を築いている、こちらには決して向かない笑みをたたえた顔。公立の学校で「不登校」を思いつけなかった”優等生”のわたしは、先生たちは休養してみたり、辞めてみたり、自由でいいよなあ、と思っていた。(*1)

小学校の高学年のときに、同級生から複数回身体をまさぐられるという暴力を受けた。細かいシチュエーション等ははっきりと記述しないけれど、今でもその加害行為をしてきた彼の名前はフルネームを漢字で記述することができるし、明確に傷として刻まれている。不幸であってほしいし、死んでいてほしいと思う。もしまだ生きていて殺していいならば殺したいし、たくさんのお金があったらやりたいことの一つに身辺調査と裁判がある。そのくらいには、20代のさまざまな経験のたびに、普段は固く閉じて奥深くに沈めてある「記憶のボックス」にアクセスしてしまうし、この恨みは消えないと思う。心身ともMAXにひどい状態になると、小中高暴力夢シリーズ（なんやそれ）の中でもいちばんひどい、真っ白な空間のなか、この加害者が身動きの取れない状態で椅子に座っており、馬乗りになったわたしが相手の息の根を止めるまで殴り続けるという夢を見る。これまでこの夢はもう何度見たかわからない。起きて、腕の重だるい痛みを感じながら、ああいま疲れているんだな、と自覚する。

1月28日は、違う展開の夢だった。
はじめて加害者の彼が、私の目の前で、自分自身にナイフを突き刺した。

小学校の正門近くの廊下、そこに至る夢の経緯は忘れてしまったが、そこに私はいた。もうそろそろ帰ろうか、としていると、左手から、教師となった彼と児童が話しながらこちらに向かって歩いてくる。瞬間的にわたしはその児童を彼から引き剥がし、胸ぐらに掴みかかって、当時のことを覚えているのか、わたしはこれほど傷ついているのだと、ヒステリックに詰め寄った。彼の反応やわたしが話した具体的な言葉は覚えていない。シーンはいつしか職員室に切り替わっていて、わたしとの距離は、だれかが仲裁したのか、すこし空いていた。わたしは肩で息をしながらとにかく睨んで、罪を認め謝るまで帰らないといった態度をとった。ほんとうは何をのぞんでいるのか、自分でもわからない。とにかく、いつもなら接近戦で一方的に殴っているのに、今回の夢では距離をとって対峙していた。彼は、お望みの通りに、といった様子で、笑っているのか情けないのか、よく読み取れない表情で腹部に包丁を突き立てた。あ、なるほど、それもいいね、と思いながら、血や息絶えるさまは見届けられないままに目が覚めた。

高校のとき帰り道に、土砂降りの雨のなか、警察に補導されて道端でうなだれてやり取りをしている彼を見かけたことがある。走らせていた自転車を止めて、しばらくその様子を見やった。いまならば弱っていると思われるので、間に割って入って殴りかかってやれば少しは、と逡巡したものの、そのまま家に帰った。その機を逃さずに少しでも対面で話していれば、夢の中でなんども殺さずに済んだだろうか。今回の夢ではじめて自分で死んでくれたので、もうこの夢は見ずに済むだろうか。

1. 「不登校」を思いつかなかったのは、今でもほんとうに後悔している。どうしてああも毎日通っていたのか。「無」として窓ガラスの外や体育館の床面を眺めてトリップしながら過ごしていたものの、そのときの暴力の記憶はちゃんと刻まれていて、いまさらDV・モラハラ被害者のような意識で過ごさざるをえなくなっている。学校DV、あると思います。