金融機関の資産管理型営業がアセマネに与える影響
最近、資産管理型の営業にシフトすると宣言する銀行や証券会社が増えた。これは簡単に言うと、
【資産管理型営業】
①投資信託等の回転売買(顧客に高頻度の売り買いを進める)止めて長期の資産保有を促す。
②加えて株式や投資信託から投資一任(お任せ運用)のファンドラップに資金を移し資産残高の積み上げを図る。
なぜこのようなことをするかというと、金融機関の顧客が高齢化して、これまでのように頻繁に売り買いをしてくれるお客さんが減ってきたため、少なくとも資金が外部に流出しないように自社に囲ってしまおうという目的がある。もちろん今回は詳述しないが、監督当局からの指導も大きな要因である。
前置きが長くなったが、今回はこうした動きがアセマネに与える影響について書いてみたいと思う。まずはアセマネの収益について整理する。
アセマネの収益源の大部分は投資信託の信託報酬である。信託報酬は主に以下の2つに分解される。
※正確にはこれ以外に信託銀行の管理報酬がある
①運用報酬→アセマネの収入。運用に対する対価。
②代行手数料→投信の販売を代行する銀行や証券の収入。各種事務手続き、顧客フォローの対価。
次に証券会社が投資信託を顧客に販売した場合の収益を見てみる。
①販売手数料→投信を販売した際の手数料。
②代行手数料→上記に記載の通り。お客さんが投信を保有する限り入ってくる。
これまでの証券会社は新しい投信をどんどん採用し、お客さんに乗り換え売買を促して、販売手数料を稼いでいた。アセマネもこれに応じるように新商品を競って組成していた。残高管理型に移すということは、『もう乗り換え販売を止めて、良い投信を長くじっくり保有してもらう方針に変える。』ということなのでこれまでのビジネスモデルが大きく変わることになる。
一部の銀行や証券会社では、投信の新規採用を減らすことと合わせて、既存商品でも積極的に販売する商品の数を絞る傾向がみられる。こうなると売れ筋の定番商品は残高が増加しやすい一方で、そうでない投信はなかなか顧客の目に留まらなくなる。つまり運用がしっかりしていて、長く顧客の支持を集める定番商品を持っているアセマネが生き残っていくことになる。
ファンドラップについても少し触れておきたい。ファンドラップの購入者の大半は個人の投資家だが、組み入れられているファンドをみると機関投資家向けの商品であることが多い。これはファンドラップがダウンサイドのリスクを抑えるように設計されている場合が多く、アセマネが機関投資家向けに提供している商品がフィットするからだ。したがって機関投資家向けに強い会社が、ラップビジネスにおいては優位性があると思われる。
少々専門的なことを買いてしまったが、銀行や証券会社のビジネスモデルが変わるに合わせてアセマネ会社も体質改善を図っていく必要がある。
・運用が強く、定番商品をたくさんもっている。
・機関投資家ビジネスに強い。
こんな会社が今後強みを発揮していくと思う。