「実家が太い」だけの私#3
学生時代に比べ本当に自分の買い物をしなくなったとはいえ、
幼少期に染み付いた金銭感覚がなかなか抜けないのが正直なところだ
祖母ももうすぐ92になる
足の不調を機に施設に入った
コロナのせいで面会も出来ない
施設から送られてきた写真には敬老の日の花束を持った見知らぬお婆さん。
祖母だった
まるでハウルの動く城に出てくる荒地の魔女のような変貌ぶり
元々年齢の割に背筋も伸びていたし、ふさふさのグレイヘアーはいつも整っていたのに。
車椅子に乗せられた祖母はまるで別人だった
それまで金勘定が趣味のような人だったから、毎週のように銀行に通っては娘や孫のためにコツコツ貯金をしていたようだったし、会う度お金の話と母の心配を延々と聞かされた
きっと母の心配をしなくて済む様になって、常に張っていた見えない糸がプツリと切れてしまったようだった
「もうきっと長くはないんだろうな」
あれだけ問題児扱いされていた兄も仕事を決め、結婚した。
住まいが祖母のいる施設の近くだったらしく何かと世話を焼いているようだ
きっと兄ももう何も言われなくなったから気が楽になったんだとおもう
祖母がもし、いや絶対に来る未来ではあるんだけれど
亡くなったら
どうなるんだろう
病気の母は多くの遺産を受け取る予定だという
私はまたそれに頼りながら生きていくんだろうか
祖母の心配より、自分たちの生活を案じてしまう心が確かにある
私たち夫婦も怠けて生きているわけではない。一生懸命日々働いている。
2人の子供を生かすために毎日すり減っている
でも、何かが足りないといつも思っている
実家の財力に無意識にあぐらをかいていた私は今まで努力をしてこなかった
資格を取ったり、手に職をつけたり、まだ幼い子供を抱えていてもどうにかできるようなそんなスキルを身につけておくべきだったのに
今の私には何もない。
3ヶ月先の未来が見えない、怖い。
おわり