【詩】胡蝶の夢
風が吹いてレースのカーテンがはためく
落とされた影がいたずらに揺れている
狂わせた時計はおとぎ話の頃と変わらないまま
巻き戻したら音もなく何かが崩れそうだった
ワインの最後の一滴が グラスの中で弾けた
神秘の味は紅の隙間に閉じ込められている
鳥籠から逃げ出した黄金の胡蝶
危険な花でさえ躊躇いなく蜜を堪能する
それを無表情で見つめた瞳は記憶の中でぼやけていて
思い出せなかった
奥深くでうずくまる鱗片を一枚ずつ剥がして
硬くなってしまった心の輪郭をほぐしていきたい
枯れかけのカモミール
降り注がれる太陽の薄明を浴びるため
黄金の胡蝶は窓から飛び立った
いつか聞いたあの声が
耳にこびりついて離れない