【スイス・日本人がフランス語の現地校へ】 8. 子供が病気にかかったら
10月半ばの秋休みから11月にかけて、我が家は夫が怪我をし手術入院、子供たちは2人続けてマイコプラズマ肺炎に疾患し、スイスの保険制度や病院、薬局事情の経験値が格段にアップしました。まだまだ不明な点も多いですがスイスで子供が病気になった時の対応方法を実体験をもとに記載します。(スイスの保険制度、かかりつけ医の探し方 は過去記事を参照)
日本では頻繁に病院通い
我が家の子供たちは、風邪以外にも肌が弱くアトピーや湿疹症状があったり息子はスギ花粉の舌下療法を続けていたこともあり少なくとも月1~2回は定期的に小児科にかかっていました。小児科医の先生とは距離が近く、我が家にとって小児科は保育園同様、子供の成長を共に見守ってくれる身近な存在でした。その他にもアトピーや蕁麻疹がひどい時は皮膚科、息子の卵アレルギー通院では総合病院の小児科、娘は生まれつき太田母斑というアザの病気もあり大学病院の形成外科で何度か入院治療もしていたので、病院に出向くことは日常生活の一つでした。もちろん歯医者にも半年に1度検診で通っていました。
スイスでは薬よりも自然治癒
スイスのみならず諸外国は日本と医療事情が異なることもあってか、海外の人々は容易に病院には行かない、もしくは行けないということを聞いたことがあります。米国にいた時、体調を崩しても病院には一度も行った記憶はなく薬局で薬を購入していましたが、薬局レベルでも効果の強い薬が購入でき小柄な筆者は効きが強く薬を半分に割って飲んでいた記憶があります。
スイスも同様で、更にスイスではアロマはハーブを使った薬草療法やホメオパシーなども身近な存在です。スイス人のママ友に「子供が風邪を引いた時どうするの?」と聞いた時「アロマオイルを調合して飲ませる」という回答が返ってきました。(アロマオイルを飲ませるには最低限の知識が必要だそうです。)またスーパーには咳や頭痛、胃もたれ等、各症状に合わせたハーブティーもずらっと並んでいます。
1)子供が発熱!まずは・・
秋休み中に入院した夫のお見舞いに行った帰り道、息子の様子がいつもと違いました。自宅で体温を測ると38度。日本だったら即日か翌日朝一で小児科に連れていくのですが、スイスでは救急の症状がない限りまずは自宅で様子を見ることが主流だそうです。水分を十分に与え体を休めます。
2)そろそろ薬が欲しい・・
スイスでは解熱剤や風邪の初期症状の薬であれば、まずは薬局に行き薬剤師に相談し薬を購入します。薬剤師に症状を伝えると適した薬を紹介してくれ、処方箋なしでその場で購入することが可能です。
今回は日本の小児科から処方された解熱剤を持参していたのでまずはそれを飲ませました。
それでも咳が酷く夜眠れない日が続いたので薬局に咳止め薬を買いに行ったのですが、その時点で息子が4日続けて高熱があったため、薬剤師から小児科に行くことを勧められました。スイスの薬局の薬剤師は状況や症状をヒアリングをし的確なアドバイスを教えてくれるので、何か症状で不安なことがあればまずは薬局に行き相談することも1つかと思います。ただし抗生剤を含む一部の薬については医師の処方箋がないと薬局で購入することができません。
余談ですが、夫も手を怪我をして薬局に湿布を買いに行ったのですが薬剤師に手を見せたところ「この腫れはまずい!早く病院に行きなさい!」と言われ病院に行きました。
3)すぐには行けない小児科
薬局の薬剤師の助言をもとにようやく小児科へ連絡をしました。スイスの小児科は原則予約制のため即時受診は通常ありません。たまたま予約の連絡をした翌日が小児科の定休日に当たってしまい息子の最短の診察予約は翌々日となってしまいました。
そんな傍ら息子の高熱は解熱せず5日が経ち、咳も日に日に酷くなり既に感染症を疑っていたので保険会社に相談したところ、予約なしで行ける州内の救急病院を教えてもらい翌日、朝一で救急病院へ向かいました。
*Vaud(ヴォー州)に限りますが、「Medigo」というアプリをダウンロードすると小児科ほか診療科ごとに近隣の救急病院と混雑状況が把握できます。
4)診察と検査結果
息子は救急病院にて診察を受け感染症の検査(マイコプラズマ肺炎と百日咳)をしてその日は終わりました。翌日、陽性の連絡があり処方箋がメールで送られてきました。処方箋は診察後に病院でもらう場合と、後日検査結果に基づいて処方箋がメールで送られてくる場合もありますが、どちらの場合でも処方箋を持って薬局に行き薬を受領する流れは変わりません。支払いは医療機関から保険会社に請求、その後保険会社から個人に請求が届く流れが主流でその場合は薬局や小児科での各支払いは生じません。一方、夫は入院かつ複数病院に通っているせいか、病院からの請求に対し先ず自身が支払いを立て替え、後日保険会社に請求する対応をとっていますがとにかく作業が大変そうで手続きの処理が完了するまで時間がかかりそうです。
必要最低限の処方薬
娘の診察では一通り風邪の薬を出してもらいました。日本のように子供の症状に合わせて薬を調剤するのではなく、解熱剤、咳止めなどその症状に合わせた薬が出てきますが日本のように都度、調剤されないので処方される薬の数が多いこと、また瓶入りシロップが多く錠剤や粉薬に比べ開封後は日持ちしないのがネックです。なお咳止め薬の使用については消極的な先生も多く、娘が咳が酷いと言った際は水を飲めばいい、咳止めは不要と言われました。夜、睡眠に支障が出ていたのでどうしても欲しいと言ったところ、寝る前のひどい時のみに使用するようにということで特別に出してもらいました。逆に解熱剤は容易に出してもらえ日本より頻繁に摂取する印象です。日本の小児科でもらう解熱剤はとんぷくだったので高熱で子供が眠れない、苦しそうな時にしか飲んでいませんでした。
抗生剤の処方の際も小児科医から「抗生剤を飲まなくてもいずれは自然に治るけど欲しいですか?」と聞かれました。(勿論、欲しいと言いました。)それくらい薬は必要最低限という印象です。
また「鼻うがい」も主流で小分けの塩水も処方されました。小児科で処方された娘の薬をとりに薬局に行くとレジの裏から50本いや?それ以上のスポイト食塩水が入った大きな段ボールが出てきてしまったのです。価格を聞くとなんと150CHF!。不要だと断りました。代わりに別の本数が少ない箱を試しに買うことにしたのですが処方箋の指示とは異なる商品を購入する場合は保険適応ではなくなるので注意が必要です。
*追記:息子(3P)の親友のお父さん(イタリア人医者)にも聞いたところイタリアでは抗生剤含む薬の処方は積極的にするとのことでした。欧州でも国により慣習が異なることを実感しました。
大型総合病院と個人病院の違い
Medigoを使って近隣の総合病院(救急病院)に行った息子でしたが、娘は近所のかかりつけ医に行きました。息子に続いて、娘が発熱した時は即時で小児科に行けないことを見据え、息子の時よりも少し早めに電話予約を入れました。総合病院と個人病院を両方利用してみて、要予約か否か以外で診察の過程に大きな差はないように感じましたが、後日保険会社から届いた請求書を見て双方の金額は大きく異なりました。救急病院の方が1.6倍ほど高額でした。明細から推測すると、
・基本的な診察の単価や検査費用は同じ
・予約なしで行ける、救急病院という点での加算費用はない
・事前に看護師が症状をヒアリング→救急病院のみ。かかりつけ医の小児科は直接医者が症状を聞くのでこのプロセスはなし。
・ファイル登録にかかる費用(15年保管)→救急病院のみ。
・検査した感染症の数→息子:マイコプラズマ&百日咳、娘:マイコプラズマのみ(息子が先にマイコプラズマに疾患していたため)
下3つの項目で差分が生じた様です。保険会社によると処置や対応は病院によって異なるため、最終的な費用も変わることは普通のことのようです。
息子の場合、一度の通院で保険会社の免責金額を超える費用(500CHF)を超過してしまいました。免責額を超えた場合、その後は1割負担(上限額年間350CHFまで)で済むので気兼ねなく?小児科に通うことができる気もしますが、並行して毎月子供たちは月額100CHF/人、大人は月額400CHFほど保険料の支払いを行なっていることも考えると、スイス生活において保険医療に係る支出は膨大であることは明らかです。
日本から常備薬も持参
渡航後しばらくの間はバタバタと生活が落ち着かないこともあるので、必要な子供(と大人の)常備薬は持参しました。筆者が日本から持参した子供達の薬です。
<風邪>
・解熱剤(キッズバファリン、カロナール*)
・風邪薬(パブロンkids)
・咳止めシロップ、錠剤、ドロップ(子供の年齢に応じて購入)
<皮膚の保湿・アトピー>
・保湿剤(ヒルドイド*、プロペト)
・ステロイド(ロコイド*、リンデロン*)、非ステロイド(モイゼルト)
<アレルギー・蕁麻疹>
・抗ヒスタミン剤・アレルギー薬(アレロック*、デザレックス*)
<その他>
・わきの下専用パットアイス
・鼻水吸引機(手動)追加購入
インターネットや薬局で買ったものと、*マークは日本の小児科で処方され残っていたものを持参しました。
子供たちはアトピー体質ですが、日本とスイスで気候、水、湿度も異なるせいか、こちらに来てから痒くなる頻度が減ったように感じますが、とても乾燥しているので保湿は朝晩必須です。また、息子は日本でスギアレルギーや卵アレルギーの治療もしていたので抗ヒスタミン剤も持参しました。
海外では、子供用の脇に挟むアイスはあまり見ないと読んだので、日本で赤ちゃんの頃から使用していた脇の下を冷やすアイスを持参し活用しています。また、鼻水が長引くと風邪は必ず長引きます。日本では鼻水吸引機を何年も愛用していましたが電動式のため持参しませんでした。スイスで勧められた鼻うがいは彼らには難しかったため、鼻水対策のために後日、手動式の鼻水吸引機を購入し日本から送ってもらいました。
スイスでの初冬に向けて
風邪の流行を見据え、日本ではインフルエンザの予防接種を必ず行なっていた我が家。そして予防接種をしていても、昨年は息子、娘、母親(筆者)と3人続けてインフルエンザに疾患しました。一方、スイスではインフルエンザ予防接種は、妊婦や高齢者、医療従事者を除き接種をする人はあまり多くはないそうで我が家も今年は見送ることにしました。仮にインフルエンザの予防接種を打ちたい場合は、薬局でワクチンを購入しその場で接種をしてもらうことができるので接種自体のハードルは高くありません。驚いたのは、仮に疾患してもタミフル(抗生剤)は飲まずただひたすら寝て休む人が多いと聞きました。娘の小児科の言葉を引用するなら「抗生剤を飲まなくてもいづれは治癒する」という考えがあるからでしょうか。
スイスの人々が薬や病院に頼りすぎないのは、高額な医療保険制度が要因の1つかもしれませんが、それ以前に「自然治癒で体の免疫力を高め、薬が不要な強い体を作っていく」そのような考え方が人々の根幹にあることに少しずつ共感を得ている自分がいます。(日本では病院に通い続けていたのに!)
初めてのスイスの冬。体調を崩さないように健康に気をつけたいと思います。