私の行けない舞台に行く花

約30年前、恋人は漫才師だった。

ファンレター一通で落ちた安易な恋人ではあったが、メイン活動領域は関西で、関東に来たときはほとんど全部会っていた。

仕事での彼を観て、前か後に会って。

でも何もかも全ての舞台に行くことはできない。

行けない舞台で彼らを印象付けるには?

花を贈ることにした。

花屋で働き始めていた友人に知恵を借りて、恋人にはガザールを、恋人の相方にはルレーブを。(逆だったかもしれないw)

どちらも百合科の繊細な花だった。

毎回劇場に届けておく。

名は伏せて。(※)

△△のファンで、こんなことしよるやつがおる。

そう仲間に思わせることができればそれで良かった。

果たしてその意図を彼も気づいてくれていた。

あれ、お前やろ。

ちゃんとわかっとるわ。

持って帰られへんやろ。

せやから『会場の飾りとか、スタッフさんで分けてください』とかいうて帰るんや。

カッコつけや。


意図の通じる奴だった。

行けるオンリーライブでは、前の方の席のお客さんに頼んで、(あらかじめこちらで用意しておいた)花束を渡してもらっていた。

これくらいは別ファンって思ってくれてるかと思ったが、これもばれていたらしい。

印税が底をつくまで花を贈り続けた。

最高の遊(あす)びの日々だった。


※ 今は名のない花束は、基本出せないです

  何かあったときに業者さんが困るので

  当時もかなり困られました

  花屋さんがた、ほんとすみませんでした




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