夜半のメルヘン②〔R18有料作。ただし本日いっぱい全文公開いたしております〕

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狼と猟師とお菓子の家2~R18流血あり、童話もどき、性暴力


 水汲み! 水汲み!
 今日も水汲み!
 アタシを何だと思ってるのよ!
 一日に十四杯。
 井戸で汲んで、素焼きの壺に移す。
 するとキッチンテーブルに、一皿のスープが貰える。
 一皿!
 たった一皿!
 手も足も肉刺(まめ)だらけ。
 鏡はない。
 髪もとかせない。
 みんなに一ちゃんが、家を出ようって言ったせい!
 アタシキレた。
 水桶投げ捨てて、お菓子の家出て、家帰る道探したけど、森を三度抜けるうちに、必ずこのうちに戻ってしまう。
 お菓子の家って便宜上言ったけど、実はもうお菓子の家じゃない。
 木と煉瓦と漆喰で出来てる普通の家だ。
 荒屋(あばらや)っていっても通るくらい。
 あのババア、魔法かなんかであたしたちを騙したのよ!
 何もかも頭にくるこの場所!
 にーちゃんは、今どこでどーなってるのよ!
 なんかめちゃめちゃ頭来てる真っ最中に、アタシは見てしまった。
 『喰われてる』にーちゃんを…

 にーちゃんは、キッチンでなく、ベッドルームで喰われてた。
 そ。
 頭からバリバリでなく、裸にされてあちこち触られて。
 家でじじいたちにされてたのと全然同じじゃん。
 にーちゃん結局あのこと好きなんじゃん。
 自分だけ好きなことしてアタシは水汲み。
 こんなのやだ。
 やだやだやだやだやだやだやだやだーっ!


 妹娘の自己中が、そのまま俺の頭の中に入ってくる。
 感情が乱れて、俺は銀色でいられなくなる。
 毛並みが紅に染まり、瞳も血走ってくる。
 あいつにも優しくしてやれなくなる。
 夕べはあいつの口に俺のコック押し込んで、三度も四度もしゃぶらせてしまった。
 獣の精を味わわせるなんて、あいつを買ってたやつらでさえ、したことはないはずだ。
 かわいそうなあいつは、何か自分が粗相をしたのだと思い込んで、懸命に俺にかしづこうとする。
 そんなことしなくていいんだ。
 おまえは愚かな親を見捨て、妹を案じてうちを出た。
 賢明な選択。
 だからそのまま幸せになっていい。
 町に行って、慈善家のご婦人に拾われて、立派な紳士に育てばいいんだ。
 なのに…
 俺は今、この瞬間、あいつを後ろから貫いて、強く強く貪っている。
 獣サイズの小さなそれは、俺が赤の時には先割れした、触手のような小蛇たちに変わる。
 そいつらがぬらぬらとあいつのなかをのたくり、あいつに人外の、悪夢のような快楽をもたらす。
 苦痛と背中合わせの快楽。
 獲物が感じれば感じるほど、小蛇たちは肥え太り、内側からそこを押し開く。
 だめ、もう、無理、ああっ。
 あいつが喘ぎ、身を反らす。
 背中じゅうの爪痕と、肩口の噛み傷は、俺が赤のままぶっ飛んで、おまえに痛みを与えたせいだ。
 このままいくと俺、おまえを、おまえを、おまえを、うわあああああああっ!
 少年の躰が弾けて飛んだ。
 爆発したように粉々の肉片に変わった。
 むせかえる血の匂い。
 あたり一面の人肉片。
 俺は赤い狼のまま、その場に泣き崩れた。


 ひとを救えと言われた。
 邪悪だった前非を悔い、ひとを七人救うなら、おまえを人間に戻し、永劫の幸福を与えよう。
 人に優しくできるとき、おまえは銀の色に輝く。
 だが悪に与(くみ)したり、邪悪な感情に左右されたときは、おまえは赤の獣となり、二度と人には戻れない…
 六人救った。
 後一人だった。
 あの小娘の感情に支配されなければ、俺はこいつを死なせずに済んだのだ。
 もうもとには戻れない。
 俺の中からふつふつと、怒りの感情が吹き出してくる。
 俺は吼えた。
 狼のまま。
 小娘ええっ!
 俺はあの女の匂いを追って走り出した。
 赤い狼の姿で。

            3へ続く

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それでも地球は回っている