消しマジアプリ〔りみっとさんに捧げる一作、ではない一作(汗)〕
壮年期ののちに映画を作り始めたりみさんには、りとさんという妹がいる。
何もしてこなかったから、と今を充実させようと決めてるりみさんとは対照的に、りとさんは一切の不満もしくじりもないようだ。
ないっていえばないんでしょうけど・・・
厳密に言うと違うんです。
りみさんは声を潜めた。
消しマジアプリ
過去の写真からも、人物とか消せる、消しマジアプリってありますよね。
りとのスマホの中のアプリ、イレギュラーだったらしいんです。
裏切った恋人の代わりに新進アイドルの写真に差し替えたら、アイドルの新恋人として、マスコミに認知されてました。
その後ある作家が気に入って、自分で攻めて行ったときも、消しマジで人物入れ替えたら、スルッと妻の座に収まれて。
アプリ様々ですよ。
羨ましかった。
私には甥にあたる彼女の息子が東大落ちたときも、受かった大学の名称書き換えて入学しちゃって・・・
さすがについて行けませんでしたけどね。
今は一流商社マンです。
まあ、これも消しマジの力なんでしょうけど。
あのアプリがある限り、彼女は無敵でしょうね・・・
頭くる。
何であんなこと取材で言うのよ!
あの記者を、消さないと。
こっそり写真に撮って、消しマジを起動、した、のだけど・・・
記者が私の背後に回り込み、私の手を握った。
自分でなく、私の輪郭をなぞっていく。
やめて!
やめて!
私が消えちゃう!
私が、わた!!
あっ
落ちかかるスマホを私が空中キャッチした。
これでよし。
折井りとは当初から、この世に存在していなかった。
折井りみは数分違和感があるかもしれないけど、すべての記録も記憶も消える。
そのうち慣れていくだろう。
これに懲りて自分、特殊アプリを一般人のスマホに入れる的な悪戯はよすのだぞ!
先輩天使のお小言が脳裡に響いた。
次は神様に言うからな!?
くううううっ!
と思ったが、確かに先輩のいうとおりだ。
でも・・・
私は先輩を、りとのスマホのフォトに念写した。
消しマジ立ち上げて、輪郭をなぞる。
これでよし。
こらおま・・・
頭の中の声が消え去り、一件はほんとうに、ややすんなりと落着したのだった。
依頼と全然違う話書いてもうた
もう一本書きます汗