みはるかす原野には何もなく、私はただ、立ちつくしている。
覚えているのは機内の情景。
笑い合っていた仲間との時間。
突然のガクンという振動。
急速に高度を失う機。
女子の悲鳴。
そして。
気づくと私だけそこに立っていた。
額からの血流は大した傷でなく、だんだんに乾いていっている。
でもってここはどこだ。
今はいつだ。
太陽が完璧真上なおかげで自分の影さえなく、時刻を類推することもできない。
ああそうか。
少なくとも・・・いまは昼間だ。
何時間経ったろう。
今も影はない。
太陽はじりじりと、完璧真上から私を焼いている。
見上げる。
やはり真上にある。
かれは1ミリの影さえも、私に許さない、寄越さない。
でもなぜだ。
ほかの乗客も、乗員もいたはずだ。
私だけが助かったのか?
でもなぜ?
スマホを見る。
ニュースサイト。
旅客機奇跡の生還。
乱気流下エアポケット。
ガクンと振動した機内から、扉を開けて逃れようと・・・?
してる田塚を押しのけて飛び降りたばかが一人・・・
私だ。
生徒たちも教師仲間も眼中になく、扉を開けた田塚誠教頭より先に飛び出した・・・
パラシュートもなしに。
扉はすぐ閉ざされ、バランスを取り戻した機は飛行継続し、無事目的地に着陸。
では私は?
ここは??
見上げる。
完璧真上のままの太陽が、私をがっちり捉えている。
不意に理解した。
私には永劫日陰は与えられないのだろう。
なぜならここは
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