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イッセー尾形の舞台を死ぬまでに一度は見ておきたい②


イッセー尾形を初めて目撃したのは、笑っていいとも!のテレホンショッキングだったと思う。海外公演の話かなんかをしていて、子どもながらに「この人はテレビ俳優っていうより、舞台コメディアンの人なんだろうな」と印象を受けた。
テレビで見かける機会は少なかったのだが、10年ほど前にたまたま見ていたドラマに登場した。
村上龍原作の『55歳からのハローライフ』という1話完結のドラマである。
50代、60代の人々の、定年、リストラ、早期退職などの転機をテーマに5編あったのだが、私が見たのは、イッセー尾形主演の回。

勤務先の出版社がつぶれ、「ホームレスになるかもしれない」という不安を抱きながら主人公(イッセー尾形)は肉体労働に従事し、毎日厳しい生活を送っているのだが、その日常を描いてるシーンに釘付けになった。
苦しいおっさんの日常に、その場にいた夫は「ヒリヒリするわ〜、もう見ていて辛い」と、途中退場したのだが、私は物語というよりも、イッセー尾形の演技に目を見張ったのである。

主人公は台所へ行き、ペットボトルの水を飲んで、キャップを締めるというシーンなのだが、その締め方が普通に締めるというよりも、くるくるくるっと必要以上に高速で回しながら締めるのである。
きっと、この人は毎日こういう締め方をしているのだな、癖なんだな、と思うと同時に、主人公の内面の焦りのようなものも伝わってくる。表情とかよりも、人間の心理って案外こういう細かな動作に現れてるものなのか。
これを全て計算しての演技作りなのだろうか、それがあまりに自然でもう物語どころではなくなったことを覚えている。
それをサラッと演じてるあたりにこの人の凄さがある。
もう佇まいが主人公そのもの。

これは沖田修一監督の『キツツキと雨』で、木こり役を演じた役所広司を見た時も感じたことだ。演じてる、というよりもその役人生そのものを生きているように見える。全く違う、例えばホテルマンを演じたときは、ホテルマンそのものに見えるし、他の役でも全てそう見えてしまう。
演じることへの情熱を、役所広司とイッセー尾形には感じる。

そういうわけで、イッセー尾形への特別な思いを静かに心にしたためていた。
実は去年も京都で舞台をされていたが、気づいたら期間が終わっており、悔しくも流れた。今年はなんと絶妙なタイミングでポスターを見たのだった。
公演は来月。
B面好きの中年女ふたりで伺います
チケットはあと残り僅か。


↓そのドラマのインタビュー記事



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たみい
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