外に出れば何かが起こる
梅雨真っ只中であるが、4歳の息子とほぼ毎日虫取りの日々である。
正確にはわたしが虫を捕まえ、息子が虫かごの虫を観察し眺めているのだが。
先日、黒アゲハを捕ってほしいと息子が言い出したので、虫取り網を一心不乱になって振り回していた。
しかし思ったよりも動いてる蝶の捕獲はなかなか難しい。
その日の公園では落ち着きのない蝶ばかりで、無駄に網を振り回すはめになった。
40手前になって如実に感じるのだが、頭でイメージしてる自分の動きと、実際の動きが明らかに違う。
イメージではぱっとすばやく動いているのに、実際の動きがスローモーションなのかと思うくらい遅いのだ。
この差に一瞬脳みそが揺れる。
完全に体がついていけていない。
しかも後ろで観てるだけの息子に、
「もう!おかあさん!ぱっと捕ってよ!」と、イラつかれる。
おかしい、おかしいと思いながら、変な汗をかいていたら、突然目の前に小学生の男の子が現れた。
とてもきらきらとした眼差しで、彼はこう言うのだ。
「あのね、一匹だけ、捕ってあげようか?」
その言い方が、まるでおじいさんが自分の孫に諭してるかのような、とてもやさしい言い方なのだ。網をやたら振り回してる大人に、見るに見かねたのだろう。
わたしはすぐさま「お願いします!」と、低姿勢で頼んだ。
彼はあっさりと黒アゲハを一匹捕まえてくれた。
そして、じゃあ、一匹捕ったしね、という顔を残して、さわやかに去っていった。
その立ち居振る舞いにとても品があり、こんな王子様のような小学生がいるのか!と、しばらく呆然とした。
と、一息つく間もなく、突如公園にリードも首輪もしていない大型犬が乱入してきたのだ。
大暴走する大型犬(たぶんレトリバーだろう)に、喜んでいるのか、怖がっているのか、よくわからないテンションで逃げ回っている小学生たち。
公園がまるで生放送のドリフのコントのように、目まぐるしく犬と子供たちが端から端を行ったり来たりしていた。
わたしたち親子は呆然とそのはちゃめちゃな光景を眺めた。
もうわけがわからない。
犬は尻尾を振ってるので、遊んでほしいモードのようだが、息子は犬が苦手なので、すぐに帰ろう!と言い出し、結局どこの犬なのかもわからず公園を後にすることになった。
平凡な日常でも、日々なんだかよくわからないことの連続だ。
2017.6.22『もそっと笑う女』より
追記:後から知ったのだが、黒アゲハは蝶々の中で動きが遅い方らしく、小学生の間では捕まえるのは楽勝とのこと。しかし、その激遅黒アゲハでさえも、捕まえることができなかった大人もいるのである。
追記2:暴走した犬は公園の近くの家の犬らしく、すぐに飼い主が迎えにきたとのこと。たまに脱走する犬らしい。
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