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母の考察/お母さんの夢ってなあに?


母の本棚に、群ようこの本が置いてあったことを思い出したとき、あれ、なんで群ようこ読んでたんだろう?と改めて疑問に思った。
母は昭和25年生まれの田舎生まれの田舎育ち、そのままお見合い結婚で父の元に嫁ぎ、ど田舎というしがらみ100%の世界でどっぷり生きてきた女性である。そんな人がおそらく今の私くらいの年齢の時に、ひっそりと群ようこのエッセイを読んでいた。しかも、群ようこがアメリカへ行った旅行記なんかを読んでいる。不可解だ。他にも多数の小説、反中国、なんて思想強めのハードカバーを目撃した時は、静かに本棚に閉まった。事実母は確固とした自分の哲学を胸に秘め、それをあからさまにすることはないが、女が前に出るのは端ない、常に夫を立ててという体裁を保とうとしていた。

そういえば、と思い返した。
当時の田舎では珍しい外国人と出会うと、「英語で挨拶したよ!」と小躍りし、母がいつもラジカセで流していたのはクラシックかアメリカのオールディーズ音楽だったし、日本の演歌を好んで文化芸術には無頓着な父親とは真逆の趣味嗜好で、お父さんと趣味がまったく合わん、とため息をついていた。少し余裕ができるようになると、父を置いて友人たちと美術館旅行へ出掛けて楽しんでるようだった。
ほんとうは、母は、若い時にもっと広い世界で自由に人生を謳歌したい願望があったんじゃないのだろうかと睨んだ。

数年前に「お母さんが小さい時の夢ってなに?」と聞いてみた。
母は黙ってしまった。
その余白が全てを語っていたからそれ以上聞かなかった。


今は田舎で野菜やハーブを育て、ターシャテューダーみたいに自分の世界をひっそりと楽しみたいと思っているひとりのおばあちゃんで、それを実現させている。認知症予防にアロマが効くらしいからいくつか送ってほしいと、自ら予防活動に動き始める辺りが実に母らしい。










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