マイノリティ気質


わたしのパソコンは機能停止、もうほぼアホになっている。

こうやって文字が打て、更新できるのは夫のMacを借りているからだ。


20年前に初めて買ったパソコンはMacだった。

周囲に「なんでMacなんかにするの?」「は?Mac?」と、Windowsユーザーから怪訝な顔をされた。

うるさい、外見重視や。
そう思って遊び心のあるMacをえらく可愛がり、iPodが発売されると、アップルストアに駆け込み、うっとりとしながら手にした。

5年ほど経ち、Macを欲しがってる知人に譲ると、なんとなく次はWindowsのパソコンを買った。どれくらい違うものだろうか?
使ってみると、驚いた。

ユーモアがあり退屈しないおしゃれな男の子と別れ、真面目で誠実だが面白味にかける退屈な男の子と付き合い始めた、という感じか。

無味無臭のこのかんじ!
だが、何が何でもMacがいいとは思えなかった。もう、おしゃれな男はいいんだ。



そしてiPhoneが発売されると、爆発的にMacユーザーが増えていった。
そうなるとわたしの中のマイノリティ信仰が爆発し、何が何でもアップルは選ばないとプログラミングされた。


7、8年前に、初めてスマホにした。
機種はブラックベリーという、日本ではiPhoneが爆発的に普及する中、とことんマイノリティなスマホを選んだ。

もう、おしゃれな男はいいんだと言いつつ、ルックス重視だったのだ。(好みは中々変わらないのである)
そしてわたしの憧れの存在であった、抜群に知的でおしゃれな友人がこのブラックベリーを使っていた。
もうこれしかない。
早速携帯ショップに行くと、「これは世界のエグゼクティブや、あのオバマ大統領も使ってる携帯なんですよ!」と店員に鼻息荒く説明され、一気に買う気が失せてしまった。

一旦保留にしたものの、やはりどうしてもブラックベリーがほしいという結論に至った。
もうなんの迷いもなく「ブラックベリーをください!」と店員に言い放った。


10年ぶりに抜群におしゃれな恋人を得たような気分だった。


電車に乗っても誰もブラックベリーを持つ人はいなかったことも、気分を高揚させた。
同じブラックベリーを持っている人に出会ったのは、先のおしゃれな友人とその旦那さんと、もう一人しかいなかった。

その人とは何かのワークショップに参加した時に出会った。
おもむろにブラックベリーをポケットから取り出して、びっくりした。ブラックベリー!慌ててわたしもマイブラックベリーを取り出すと、その人も「オーー!」と大変興奮していた。
アマゾンの奥地で偶然日本人に出会った、という感覚に近い。
ブラックベリーを持っているということだけで、意気投合してしまうのだ。
そのくらい日本においてブラックベリーユーザー同士が出会うと、妙な一体感が生まれるのだということを体験した。


しかししばらく愛用していたものの、不具合の多さと、スマホの機能をあまり使わない(まだLINEやインスタが登場する前だったのだ)ので、あっさりガラケーに戻した。


おしゃれな男はもういいんだ、機能性重視や!


だがスマホが主流の今、ガラケー自体がマイノリティになっているので、思想なんたらとは関係なく、わたしはとことんマイノリティ体質なのかもしれない。



2017.12.1『もそっと笑う女』より


追伸:2020年、夫婦を揃ってiPhoneを所有する現在。利便性重視のマジョリティとなった。

というか、マイノリティもマジョリティも、どうでもよくなった。使い勝手さえ良ければ。これは加齢によるものだろうか?

しかし今のところ、ブラックベリーを超える洒落たスマホを見たことがない。

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たみい
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