おれの後頭部を見てくれないか


モヒカンスタイルが定番になった夫。


ほぼ毎日我が家の狭い洗面所で、モヒカン調整を自ら行っていて、じゃーという、バリカンの音が静かに聴こえてくる。

ああ、やってるな、と思うくらいで、その日課には関わらないように努めているのだが、先日洗面所から夫の声がした。


「ちょっと!!見てくれないか」

面倒くさいと思いながら洗面所に行くと、真顔で夫が言った。

「後頭部どうなってる?黒豆みたいなのない?この黒豆みたいなのが、気になるんやけど」

黒豆を連呼する夫に若干引きながら、後頭部を確認してみると、丁度つむじの辺りが、ぽつんと浮いている。


黒豆と言われればそう見えるが、ただのつむじだと思えば、そう思うし、要は、どちらでもいいといった感じである。


「黒豆には見えへんよ」

と夫に伝えると、一気に安堵の表情を見せた。

「よかった」と言いながら、引き続きモヒカン調整に黙々と入った。

メキシコの床屋で、後頭部をじゃがいも頭にされてから、後頭部に対して敏感になりすぎてるように思うが、はっきり言っておっさんの後頭部をじっと見る者はまれだろう。



黒豆探し

夫の後頭部を

こんなに真剣に見ることはない
(自由律俳句)


2018.4.23『もそっと笑う女』より

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たみい
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