悪魔の目的地 第十九話
新人が職場に慣れ始め、しばらく経った頃。
新人歓迎会が開かれた。
近くのバーを貸し切って行われた。
去年、この会は開かれなかった。
あの頃はちょうどマコの一件があり、それどころではなかった。
この歓迎会、私と高卒の里中・林の三人だけがソフトドリンクだった。
他の連中は皆、随分下品な飲み方をし、大いに盛り上がっていた。
『里中、林、大丈夫?なんかごめんね。酔っ払い、うざいよね。』
『あ、いえ。』
『私たちは大丈夫です。』
『二人、仲良しだね。なんか見てて安心する。』
『え、ホントですか?笑』
二人は顔を見合わせて笑う。
仕事中には見せない笑顔だ。
とても可愛らしい。
しばらく高卒3人組で、女子トークをした。
二人の出身地とか、どうして高卒で入社したのかとか、専門学校はどこに行きたいとか、いろんな話を聞いていた。
するとそこに顔を真っ赤にした谷田部が来た。
『〇〇さん!ズルいです!私も仲間に入れてください!』
『おぉぅ…谷田部、随分呑まされたね…明日も仕事だよ?大丈夫?』
『全っ然!平気です!』
『谷田部ちゃん、酔うとキャラ変ヤバっ。笑』
里中が言った。
林もニコニコしている。
谷田部は二人の真ん中に座り、甘え始めた。
この三人はうまくやっていけそうだ。
いつも2:1に分かれていたから、谷田部のことを少し心配していた。
でも、大丈夫そうだ。
私はトイレに席を立った。
すると黒田さんがトイレから出てきた。
そこは細い通路、皆から死角になっていた。
思わず、怯む。
『…あみ。』
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